路地裏ロマンス




いつも見かけるのは、表舞台ではなくて裏舞台。
初めて見かけたのは、人が通らないって言ってもいいほどの暗い路地裏。

なんで当時はあの場所にいたのかよく覚えていないけど。
でも今となっては良い思い出の場所なのかもしれない。

ただ、その裏路地で出会った、闇のようで麻薬のような人。
その場所を思い出の場所と云うには、不気味すぎるけどね。



「ねぇ、幹部さま。」
「その名は何時になったら止める気だ?」



いつものように、闇に紛れて任務から戻る私と幹部さま。
愛車を華麗に乗り回し、私はその助手席。
いつもなら運転席は、幹部さまの相棒で、助手席に座るのに。そして私は後ろ。
今回だけ。うん、今回だけ座っている私が居る。
(そもそも許可が下りなきゃとっくに血染めになっているわ、私。)



「そんなことは放っといて。これからお時間ありますか?」
「あ?」


行きたいところがあるの。と言っては彼が大丈夫か否かすら聞かずに場所だけを言う。
その場所は あの 何もなくただそこには闇が存在する暗い暗い路地裏。



「…何の真似だ?」
「イヤだな幹部さま。物騒にベレッタ出して。」

あはは、と笑うが彼の愛銃をこめかみに押しつける映像は死刑執行数秒前。
シャレにはならないのによく笑っていられるなと自分を褒め讃えたい。

‥って、シャレで済ませたくないからあっさりネタバラシする私が居るんだけど。



「思い出の場所なんです。此処。」




私が嬉しそうに笑うと、それは何故だ。と。
だが、この暗く闇しか存在しない場所。
そこを思い出の場所だという彼女。



「なら聞くが、何故此処が思い出の場所だ?」
「だって、ジンと初めて会った場所だから。」



本人はもう覚えていないだろうけど。私はあの強烈なことを覚えてる。
闇の中に紛れるのに、銀色の綺麗で長い髪が鮮明に覚えている。



「どうせ覚えていないでしょうよ。ね?」
「誰がそう言った?」

「じゃ、覚えてた?」
「フン、さあな。」



いつものようにはぐらかして。
でも覚えていたとか忘れていたとか。

今の私にはそこまで重要じゃなくて。
ただ、確かめたかった。

この場所が私のはじまりだと。
そして、私がアナタに惚れた場所だったと。



裏路地ロマンス
(アナタはまるで麻薬のような人ね)
(クッ、ならてめぇは麻薬に惹かれた中毒者か?)
(そうね、衝動的で。依存症ね。)