長いこと、一人部屋で長々とパソコンのキーを叩く日々。
カタカタと静寂を切なく破る。
いつもならいる彼、がいない日々。
そんな日が暫く続いた。
カチャ、キィと古びた一室のドアが開く。
叩いていた指をピタッと止めた。
開いたドアからは気配はない。いや、消していると言った方が正しいだろうか。
まるで勝手に開いたかのように。
後ろは振り向かない。だって誰がやったか解るから。
「幹部さま。お久しぶりですね。」
やっと振り向いてはにこり、と微笑んだ女性‥。
というより、まだあどけなさを残した少女の面影にも見えるが。
そんな彼女・篠崎來はミルク入の珈琲カップに手を伸ばして軽く飲む。
「長期任務‥大変だったでしょ?幹部さま自らなんて‥余り無いから‥。」
「あの方の命だからな。」
それなら拒む理由などどこにもない、とどこまでも忠実。
私はそんな忠実に生きる様が好きだ。
でも、その分命を受ければ容赦も情けも存在しなくなる。
そんな非情でストイックな様も、好き。
「ところでてめぇは今迄何やってた。」
「‥まぁ、仕事でしたので‥徹夜に徹夜を重ねてました。」
おかげさまですっかり寝不足です、とアハハと笑う彼女。
確かに今の彼女は目の下の隈は色がいつも以上に濃かった。
「幹部さまもお疲れでしょ?では私はこれで‥。」
「待て。」
「‥‥はい?」
場所を変えよう、と立ち上がったものの、声を掛けられ振り向けば腕を捕まれ、そのままの勢いで備え付けられたベッドにダイブ。
「ちょ!ちょっと‥!幹部さ‥」
「ジンだ。」
あぁ、もう!確かにわざと名前を呼ばないのは私の悪いことだけどさ。
だからって、ベッドに道連れダイブし、更にはそのまま組敷かれるのは如何なものかと。
しかも、腕まで束ねて頭の上で拘束。
え?何で押し倒されてる?
もしかして危険信号?
そんな状態が、ぐるぐる頭の中で回った。
「ジン!何拘束してんの!」
「俺から離れようとすんな。」
「で、でもお疲れなのに邪魔しちゃうでしょ‥?」
あぁその言葉は嬉しい!上司と部下なのに恋人みたいな言葉。
嬉しすぎて涙が出るけど、この状態は流石にダメ。
気を遣えない部下なんてお荷物だろうと。邪魔だから退くっていうのに。
「ならてめぇも付き合え。」
「‥‥へ?」
間抜けな声が私から出てきた。
睡眠を取るのに邪魔だろうと思ったからなのに、寧ろぎゅーって力強く抱きしめてくる。
(寧ろ、痛いくらいに。下手したら折れそう。)
「來も寝りゃ良いだろ。」
「‥あー。それって、つまり‥。」
やっと解った。
つまり一緒に寝ろ、ってことですね。
うん。解りやすい。
でも、それをストレートに言わないものだから素直じゃない。
「解ったら諦めろ。」
「はいはい、解りましたよ。」
呆気なく諦めた私だけど。
本音を言ってしまえば、嬉しかったんだよね。
素直じゃない恋う人
((一緒に寝たいって素直に言えば良いのにな‥))
((傍に居たいって素直に言えば良いものを‥))
((この意地っ張り))