幻想世界の褒美


折角の聖夜なのに、私には無関係らしい。
そう、告げられたのだ。

長期任務が終わったと思った途端、コレだから。



「え?ドレスアップ?」
「あぁ‥。任務だ。」

「ふぅん‥。ま、私が直なんて珍しいけど。」



今まで情報を専門にし、現地で動くのは最初の時くらいで殆ど無かった。
それなのに、幹部さまことジンは現地での任務があると告げられたのだ。

しかもだ。場所は高級のホテルで、ドレスコードが必要となる。
ドレスなんて資金で何とかならないのか、なんて思うも仕方なく独自ルートで入手。



「これ‥で、いいの、かなぁ?」



手に入れたドレスはシックで大人っぽい印象を受ける黒のドレスだ。
指令を受けた場所に向かいつつ、夜景の空を楽しむ。

本当に、聖夜と呼ばれている夜に何故任務が入ってしまったのか。
これがプライベートだったら、喜んで楽しめたのに。



「えっと‥待ち合わせ時間と場所はココのはず‥‥。ん?」



頭の中で場所を確認し、時計をちらりと見つつあたりを探せば目的の場所を発見した。
すると、その位置から少し離れた場所に、見慣れた影。



「あれ?幹部さま‥。」
「早いな。」



それは私の上司。
彼も一緒なんて思いもしなかったから、一瞬見間違えたのかと思った。
(見間違えた、なんて言ったら即ベレッタが飛んできそうだけど黙っておこう)

彼は変わりもせずに黒コートに帽子。
少し違うのは、コートの下がいつものハイネックではなかった。
(やっぱり、ドレスコードの場所だからそれなりの格好にしたのかな…?)



「さっさと行くぞ。」
「あ‥‥、うん。」



言われるがまま、幹部さまについていくと、到着したのはバーだった。
てっきりホテルだから密室での取り引きかドレスコードが必要なレストランかと思っていた。
だけど、幹部さまと大体一緒にいるのはバーでもあったから、そこまで以外ではなかった。



「うわ‥‥すごい。」
「何ボケっとしてんだ。こっちに来い。」



しかし。流石ドレスコードのバー。
空間は不思議と大人の雰囲気で少し入りにくそうな。少し敷居が高そうにも思えた。

更に、驚いたことが。場所をとっていたらしく、その場所は夜景がとても美しかったのだ。

取り敢えず一人ずつオーダーすれば、改めて景色を眺めた。

高い位置にあるバーで、下の世界が闇と光が散らばっていて綺麗な絵をなっていた。
本当に。これがプライベートだったら嬉しくて泣きそうなのに。

今はこれが任務だということで楽しむことすら許されないのだろうと思うと別の意味で泣きそうだ。



「‥‥で、さ‥。任務の内容何にも聞いてないんですが‥。」
「そりゃそうだ。仕事なんざ嘘だからな。」

「ふぅん‥‥嘘‥‥、へ?」


嘘、と言う言葉をさらっと流した所為で篠崎はいまいち理解できなかった。
彼・ジンは言った。

仕事は嘘。ということは、今はプライベート…なの?



「何間抜け面してんだ‥。単に誘っただけだと言ったんだ。」



ジンはそう言ってちらりと彼が視線を夜景に移すと、夜空から白銀が舞って落ちていく。



「闇が色に彩って照らされ、白銀が落ちる景色なんざ偶然だったがな。」
「え、‥‥え?」

「まだ判ってねぇな?」



丁度注文したお酒がテーブルに並べられた。
グラスを持つ姿が優雅で、一瞬目が止まる。



「お互い長期任務が空けたんだ。たまにはこういったのも必要だろ?」
「あ‥‥有難う、ございます‥‥。」



長期任務からの開放からのちょっとした娯楽。
自分自身に対してのご褒美が少々サプライズだったのが以外だったけど。

赤と緑と白に彩られた景色が、とても幻想的で美しかった。





幻想世界の褒美
(ま、まさか…こんな嬉しい事…。)
(今回の篠崎はいつも以上に頑張っていたからな。せめての褒美だ。)
(ふふ…今宵は楽しみましょうね?)