あわくひかる


※4年生のときのはなし



「・・・・・・」

月に1度、朝食の便で親から届くこの手紙が本当に嫌いだった。最初はとって付けたように始まる元気かどうかを尋ねる文言が書いてあるが、3行目からはほぼ兄がどうしているのかという催促、それに続いて家系だどうだとか純血がどうだとかが延々と語られている。いつものことだ、と斜め読みして乱暴にローブにしまいこんだがやはり気分は晴れなかった。

「おはようレギュラス」
「談話室にいないから寝坊したかと思った〜」

おはようございます、と返すと相変わらず不健康そうな青白い顔のセブルス先輩と、極度のさむがりのリツ先輩が腕をさすりながら僕の左隣に並んで腰を下ろした。ふたりともいつも通りでなんとなくほっとできたが、朝食はなんだか食べる気が起こらないのでふたりのために紅茶を入れることにした。ああそう、それから。

「リツ先輩、これあげます」
「えっ、なにこれ高そうなお菓子」
「家からですよ。僕これあまり食べないんでどうぞ」
「ま、まままじですか!!!?」

お菓子に目のない先輩はぎゃあぎゃあと騒ぎ立てながら(途中でルシウス先輩にたしなめられてた)幸せそうにチョコレートの粒を頬張って、その後セブルス先輩に野菜を食べてないと怒られていた。いつもなら僕も追い打ちをかけるように先輩を煽るのだけれど、今日ばかりはそんな気にもなれない。授業がある、と少し早く席を立つことにした。大広間を出る前に何気なく上を見上げると今日はどんよりとした曇り空だった。見なきゃよかった、と頭を振った。


家のことを考えるといつも憂鬱になる。兄さんが普通そうあるべきなようにスリザリンに入り、家を継いでくれるならこんなに悩まなかったに違いないけれど、どうしても少しだけ、兄さんを羨ましく思ってしまう。自分でもよく分からない。






毎週この曜日は放課後にクディッチの練習があった。飛ぶことは僕の頭をからっぽにしてくれる。風を受けながらシーカーのことだけ考えていればいいだけなのだ。こんなに最高なスポーツはほかにない。今日も日が暮れるまでに5度スニッチをキャッチして終わった。チームメイトを見てみても、今週の試合は大丈夫そうだと手ごたえを感じて空中からピッチに降り立つと、客席の方から聞き慣れた声が飛び込んできた。

「レギュラス、おつかれ!さむいーーー!」
「、見に来てたんですか。珍しい」
「午後から晴れたでしょ?だから、これ!」

じゃじゃーんというチープな効果音(もちろん先輩が自分で言ってる)で先輩の背後から飛び出してきたのは星座早見表とかかれた古びた紙だった。全く動かない。マグル製だと得意げに教えられる。

「だからね、レギュラス箒のせて!」
「はあ・・・まあいいですけど」

とりあえず風邪でも引かれたら面倒くさいので先輩にクディッチユニホームのローブとマフラーをぐるぐるにまきつけておくことにした。手袋と耳宛ては元々つけてきているから、これで大丈夫なはず。先輩を後ろに乗せて箒を上へ傾ける。

「ぎゃあー寒い寒い寒い!!!」
「ええ?あんなに防寒してあげたのに・・・どこが寒いんですか」
「眼球やばいよ、ちょうさむい」
「そんな目を見開くからでしょ。大体真冬になんで箒乗りたがるんですか寒がりのくせして」

「だって、レギュラス元気ないから、レグルスさがそうと思って」

身を切るような寒さの中で、それでも温かいと感じてしまうのは他でもないリツ先輩のせいだ。大体ずるい、何も気づいてないような素振りでいたくせに。ああでもなんで、心はこんなにもはずんでいる。

「・・・・うーん、レギュラスの星、見えないなあ」
「そりゃあね、春が見ごろですから」
「え、えええ?!」
「諦めて、オリオン座でも探しといてくださいよ」
「くそお、・・・仕方ない!レギュラスくんにはこれをあげよう」

手をだして、と言われ僕の左手に白やピンク、黄色や緑の奇妙な形をした粒が乗せられる。

「・・・これは?」
「こんぺいとうっていうキャンディー、星みたいでしょう?」

ハムスターよろしく頬いっぱいにに詰め込んでおいしいよと笑う先輩に促されてひとつ口に含んでみる。ただの砂糖の味なのになぜだかやさしく感じる。きっとばかみたいににこにこしてる先輩のがうつったのだ。僕まで頬がゆるんできたじゃないか。


-meteo-