砂糖とスパイス、それと素敵なもの
女の子は何で出来てるの?
砂糖とスパイス、それと素敵なもの。
そういうもので出来てるの。
大人だった頃よりも、子供の姿になってからの方が手を繋いだ回数は多い。
だから私にとって彼の手はひと回りもふた回りも、それこそ私の手なんてすっぽり包めるくらい大きい。
子供と、大人の手。
掴まれた手を振り解いたのは私だけど、振り解けたのは彼が放したから。
大人と子供の歴然たる力の差を思い知らされる。
『…この件に関わるな。彼にも』
いいな。
夕焼けに陰るグレーブルーは温度も無く、そう言った。
毛利小五郎に懐いてる?
コナン君に肩入れしてる?
私が爆発のニュースを聞いて誰を想ったか、知りもしないで。
ふつふつと湧き上がるのは苛立ちと、落胆だった。
遠ざけて守って欲しかったんじゃない。
"協力してくれ"。
欲しかったのはそれだった。
零が私を"吉野雪"として、子供として扱うのは予防線を張る為の口実だ。
危険な事に首を突っ込まない様に。
非力な子供として。
彼は私を頑丈なガラスケースの中で大事に守られる宝物にしようとする。
誰にも奪われないように。
傷つけられないように。
哀しまないように。
柔らかくて、甘くて、綺麗なもので埋め尽くそうとする姿は滑稽だと笑えばきっと怒るに違いない。
「…そんなに怖がらなくても、誰にも傷つけられたりしないよ…」
吐き出されて融ける相手の無い呟きは殊更に虚しい。
私に泣きそうなくらいの愛おしさを感じさせるのも、哀しませるのも、君だけだと知っている癖に。
それなのに知らない振りをして怯えてるんだと言い訳をする。
君のそういうとこが嫌いだ。
私には守らせろとうるさい癖に自分の事は守らせやしない。
酷い男だ。
だから、君の言う事なんて聞いてやらない。
「…雪。お前ぇはどっちの味方だ」
眼鏡の奥の瞳が隠しもせず私を探る。
ああ。よく似ている。
彼の目に。
私を探る、探偵の目だ。
「どうして欲しい?」
ー名探偵。
少しの意地悪くらい許して欲しい。
だって知ってるよ。
「…お前ぇの力を、かしてくれ」
君はいつだって正解に辿り着く。
「おっちゃんを助ける為に」
コナン君。
私は君が大好きで、だけど同じくらい大嫌いなんだ。
だって君も、正義のヒーローの目をしてる。
あの人や、彼と同じ。
私の大嫌いな目だ。
「いいよ」
だけど、だから愛おしい。
そんな自分にも呆れてしまう。
「君に協力してあげる」
"子供"は我儘なんだよ。零。
男の人は何で出来てるの?
溜め息と流し目、それと嘘の涙。
そういうもので出来てるの。
4.28 P.M.
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