創造者のジレンマ
「―あの夕陽の絵は完成したの?」
ヘッドは頷く。
「あぁ、今日ね…」
「―だから、今日はそんな寂しそうな顔してるんだ」
なまえはヘッドの頬に手を伸ばす。
「そんな顔してるかい?」
ヘッドは頬に伸ばされたなまえの手に自分の手を重ねる。
「してるよ…」
「そうか…君がそう言うならそうなんだろうな…」
ヘッドはそう呟くと目を伏せる。
「―絵を描く者として、作品が完成するのは、嬉しい事でもあるけど、同時に寂しくもあるな…」
「芸術家の性だね」
「あぁ。そして、特権でもある―」
「良いね…自分だけの世界を創るって。凄い事だと思うよ」
「嬉しいよ。君に褒められると、どんな事でも俺にとって凄く誇らしい事の様に感じるよ」
そう言って笑うヘッドに、なまえは苦笑を零す。
「大袈裟だなぁ…」
「―ねぇ、なまえ。思うんだ…」
「…?」
「君の世界が完成してしまったら、俺はきっと、今迄描きあげたどの作品にも感じた事のない、大きくて深い寂しさを感じるに違いない、ってね…」
「ヘッド…」
ヘッドはなまえの手を取ると、自分の胸元に当てる。
なまえは不思議そうに胸元に当てられた自分の手を見る。
「…君の世界を色付けて完成させてあげたいって思う俺と、君を手放したく無くて、完成させたくないって思う俺がいる」
「それでも、“作品”は完成しないと、“生きる意味”を持てない…“生きる意味”は君(創造者)にしか、与えられない“特権”なんだよ」
ヘッドはそうか、と小さく笑う。
「じゃあ、なまえ、“君の世界”が完成したら、君は俺を“生きる意味”にしてくれるかい?」
―シンドウ・スガタよりも深く、君は世界で俺を想って生きてくれるのか…?
なまえは自分の手を握るヘッドの手に、更に自分の手を重ねる。
「君がそう望むのなら…」
―新しい世界で、私は君を想って生きるよ…。
ヘッドは重ねられた手を解くと、なまえを抱きしめた。
「なまえ…愛してるよ」
なまえは少し目を丸くして、それからくすぐったそうに笑うと、うん、と頷く。
「、わかったよ…」
「何がだい?」
「やっと、君に感じていた気持ちの答えがわかったよ…私も、君が好きなんだね…“ ”」
ヘッドは抱きしめる腕に更に力を込めて、君がその名で俺の事を呼ぶのは久しぶりだね、と小さく笑う。
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