夏の客人(まれびと)
「―明日から夏休みかぁ」
1学期最後の学校が終わり、なまえはタクト達3人と帰路につく。
「そういえば、今日来るんでしょ?例のお客さん。港まで迎えに行かないの?」
ワコが尋ねる。
「今日まで学校だって言ってあるし、家にそのまま来るって言ってたから」
「そうなんだ」
「あ」
「なまえ?」
ふと足を止めたなまえに3人は不思議そうな顔をする。
その視線の先には10m程離れて場所で車椅子に腰かけながら夕日を眺める人影がいた。
なまえは3人にしーっと人差し指を口許に当てると、足音を立てない様にゆっくり車椅子に近寄る。
「「「?」」」
人影に近寄ったなまえはすっと腕を回すと、掌でその人物の目を覆う。
「だーれだ?」
「くすくす…相変わらずだね」
目隠しをしていた手を解くと、車椅子の少年はなまえを振り返り、笑みを浮かべる。
「―久しぶり。なまえ」
少年は夏の空を想わせる蒼い瞳を優しげに細めて微笑む。
「久しぶりだね、ヤナ」
「うん。元気そう」
なまえは笑みを浮かべて頷く。
「なまえ。その人が、今日来るって言ってたお客さん?」
「そうだよ。ヤナ、私の従兄弟と、友達」
ヤナはなまえから後ろのスガタ達に目を向け、軽く頭を下げる。
「―初めまして。ヒオト・ヤナです」
「シンドウ・スガタ」
「ツナシ・タクト。よろしく」
「私、アゲマキ・ワコ。よろしくね」
3人にヤナもよろしく、と返す。
「ヤナ、1人?イリヤは?」
なまえは周りを見渡す。
「あぁ、君の家でリンと夕食作ってるよ。俺は暇だから少し散歩してたんだけど、そろそろ帰ろうかな」
「―うん」
なまえはヤナの車椅子を押す。
「スガタ君とワコちゃんは写真とかで見た事あるけど、君は見た事ない顔だね」
ヤナはタクトを見て言う。
「僕は今年からこの島の高校に来たんだ」
「そう―楽しそうだね。この島の学校は」
「え?」
「君の顔は、凄く楽しそうに見えるよ」
ヤナはふっと笑みを浮かべる。
「―あぁ。楽しいよ、この島。来て良かったって思う」
「それは幸せな事だね」
ヤナは僅かに目を細める。
「―へぇ、ヤナさんって私達の1つ年上なんですね」
「うん。これでも一応高校2年だよ。さぼってばっかでいつも留年ぎりぎりなんだけどね…」
タクト達3人も招いて、5人はなまえの家で夕食を取っていた。
「ヤナさんも何かお仕事してるんですか?」
「うーん…仕事って言って良いのかわからないけど、してるよ」
「―ところで、彼は貴方の?」
スガタはプラチナブロンドの少年に目を向けて言う。
「あぁ、俺の世話役、かな。身の回りの事色々手伝って貰ってる」
「―イリヤ・リオートと申します…」
「It's a cool…」
ヤナはくすくす、と笑う。
「表情は乏しいけど、料理は上手だし、気の利く良い奴だよ」
「あ。そうだ」
ワコが思い付いた様に声をあげる。
「明日皆で海行く予定なんですけど、良かったらヤナさんも行きません?」
「良いね。南の島と言えばやっぱり海は外せないよね!」
「海、かぁ。君も行くの?」
「そのつもり。時差ボケ酷かったら休んでても良いよ?」
「なまえが行くなら俺も行くよ」
「何か、恋人同士の会話みたい…」
「へ?」
「くすくす…残念ながら、俺達はそーいう関係ではないよ」
「海かぁ。明日が楽しみだ―」
ヤナは楽しそうな笑みを浮かべ、窓の外を眺める。
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