真の綺羅星
「―日死の巫女の封印は解かれ、我々は第3フェーズに進んだ」
綺羅星十字団の総会で、議長が告げる。
「旅立ちの日はさらに近付いた。さて、次に封印を解くべきは第3の巫女、ひが日死の巫女だ」
グリーンが言う。
「それで?何処にいるのかしら。そのひが日死の巫女は―」
「…」
「諸君。ひが日死の巫女が誰なのか、そしてどこにいるのか、既に俺は掴んでいる」
ヘッドは席を立つと、他の代表達に背を向ける様に机に腰かける。
「けれど、その情報を此処で明かすつもりはない」
「どういう事だ―」
「第4フェーズになれば、ドライバーは更にサイバディそのものになると言って良い。新しい本当の人間への進化だ」
「それは喜ぶべき事だが、サイバディは零時間の外には出られない。
サイバディと一体化したドライバーが、もしアプリポワゼを解除出来なくなると、そのまま零時間に閉じ込められる危険性がある」
「だから、ひが日死の封印を破る時は同時に零時間を解除する、皆水の巫女の封印も破れるようにしておかなければならない」
「勝手にひが日死の封印を破られないように伏せておくって事…?」
頭取が言う。
「あたし達が信用できないの?」
スカーレットキスが問う。
「―かつて第2フェーズに進んだ時、シナリオを無視して封印を破ろうとした急進派もいたからな」
スカーレットキスは舌打ちをする。
「兎に角、まずは皆水の巫女を守っているあのタウバーンを倒す事だ」
「―ところで、この前の戦いの時、ヘッドの胸に本物のシルシがあるように見えたんだけど?」
スカーレットキスが尋ねる。
「その話をする前に―」
ヘッドは片手をあげる。
それと同時に、モニターに各隊の電気棺が映し出される。
「何だ…?」
「電気棺…?」
「ふふふっ…」
ヘッドは笑みを浮かべ、パチンッと指を鳴らすと同時に、全ての電気棺が爆発した。
「貴様っ!気でも狂ったかっ!」
憤慨するグリーンにヘッドは気にした様子もなく笑う。
「ふふっ…最早我々に電気棺は必要ない」
「「「…?」」」
「説明はあるんだろうな」
頭取が厳しい声音で言う。
「この件に関して、プロフェッサー・シルバーから大事な報告が有る」
ヘッドに代り、前に出た議長が言う。
科学ギルドのプロフェッサーシルバーがライトに照らされる。
「―第3フェーズ以降、サイバディに乗り込んで動かせるのは、本物のシルシをその身体に刻まれたドライバーだけだ」
その言葉に、団員達に動揺が走る。
「これまでの機械装置のシルシでは、これからのサイバディは動かない」
「何ですって…?」
地面が揺れると同時に、代表達の座していた星型の机が広がり、中央からバニシングエージの面々が現れる。
「―そして、我らバニシングエージのドライバーは、全員が本物のシルシを持っている。
おとな銀行所属の彼等3人、ウィンドウスター、ニードルスター、バンカーも本物のシルシを持っているそうだ」
「…」
頭取は何か言いたげな表情で3人を見上げる。
「これからはエンブレムも必要ないわけですね」
「本人達の希望により、以後、彼等3人のスタードライバーはバニシングエージで預かる事とする。そしてもう1人―」
カツカツと足音を響かせて現れたのはグラウクローネだった。
「グラウクローネ…?」
グラウクローネが歩み出ると同時に、エンペラー代表の席が動き、隣にもう1つ席が現れる。
「エンペラー代表の席が2つ…?」
「―本来、エンペラー代表の座は2つ」
ヘッドが口を開く。
「彼女の意思を尊重して、これまでは科学ギルドのプロフェッサーグリーンを始めとする数名にしか明かしていなかったが―」
「―彼女はザメクと同等の力を持つと言われる、審判者のサイバディ・マイアンのシルシを持つスタードライバーだ」
「ザメクと同等…!?」
「本当に、グラウクローネが…?」
数歩前に歩み出たグラウクローネは片方の席に軽く手を乗せ、もう1つの空席を見る。
「―だが、私が此処に座るのは、もう1つの空席にザメクのドライバー、つまり、シンドウ・スガタが座する時だ」
そう言って口端を上げると、バニシングエージと同様、エンペラー代表の席の前に下ろされた階段を上る。
それを代表達はただ困惑した表情で見つめる。
「―という訳で、暫定的にではあるが、これからも彼女には今まで通り、バニシングエージに所属して貰う」
階段を上ったグラウクローネは先に上っていたヘッドの隣りに立つ。
「これはクーデターなのかしら…」
「…最初から仕組んでたのね」
グリーンと頭取が言う。
「勘違いしないで貰いたい。我々が“旅立ちの日”を迎えれば、世界は我々の物になる。そして、我々とは―」
ヘッドは両腕を広げ、高らかに告げる。
「―今此処にいる綺羅星十字団全員の事だ!」
「―華麗なる革命絵巻だったねぇ」
バニシングエージの面々はいつもの様に、秘密部屋に集う。
「ただ、資金面や技術のサポートは引き続き必要です。やりすぎは良く無い…」
バンカーが言う。
「―でもまぁとりあえず、メンテナンス作業で電気棺が使用可能になるのを待つ必要は、なくなったわけだ」
バンカーの隣りに座っていたスティックスターが言う。
「良かったんですか?貴女がマイアンのドライバーだとばらしてしまって」
ソードスターはカウンターに座っていたグラウクローネに尋ねる。
「アインゴットの時に見せていたし、第3フェーズになって“旅立ちの日”が近付いた今、明かしても問題は無いわ」
―それに…。
グラウクローネは仮面の下で、僅かに目を伏せる。
「ヘッドはいつからひが日死の巫女の所在を掴んでいたんです?それは、俺達にも内緒ですか?」
キャメルスターは、壁にかけられた絵画を眺めるヘッドに目を向ける。
「彼女にはまだやって貰わなくちゃならない、大事な仕事が有るんだ。
彼女の身の安全のためにも時期が来るまでは伏せておく」
「そうですか」
「…」
グラウクローネは何やら思惑ありげなキャメルスターを黙って見る。
―…。
「要するに、フェーズを先に進める為にはタウバーンを倒せば良いんだな?」
ニードルスターが尋ねる。
「―早速だけど、このウィンドウスターが、タウバーンと戦ってもいいかしら?」
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