夏の終わり
「えーっと…実は、期末試験の時、教室の中で怪しい雷の音が鳴り響いてたのは、あたしのお腹の音ですっ!」
「たまや!」
寮のバーベキューパーティーは終盤を迎え、打ち明け花火大会と称して1人1つずつ秘密をばらしていく事になった。
ワコからルリに花火が回る。
「じ、実は、前にタクト君のお弁当作った時、作りたてのコロッケに5分以上かけて、ラブラブ念力込めました!」
「たまや!」
ルリからなまえに花火が回る。
「あー…実は、ファーストキスはもう経験済み」
「たまや!」
なまえから隣りのヤナに花火が回る。
「実は、その相手は俺」
「たまや!」
「実は、よくメイドに背中を流して貰う」
「たまや!」
「実は、ファーストキスの相手は飼い猫のレオナルドでしたっ!」
「たまや!」
「実は、ピーマンが食べられない」
「不発!」
「っ…じゃ、じゃあ、実は、ベニオの水着で逆上がり100回のビデオを隠し撮りしたのは俺だっ!」
「たまや!」
「えっと…実は…じゃなくて昔、じゃなくて…あ…!」
テツヤから花火を回されたタクトの番で花火が消える。
「かーん。またまたタクト君の負けー!」
「またまたタクト君だぁ」
「えぇっ…もう靴も靴下も脱いじゃったし、これ以上は流石に…」
「良いから脱いじまえよ」
困り果てるタクトになまえ達はくすくすと笑みを零す。
「―面白そうな事してるねぇ」
「ん?」
声の方に目を向けると、マドカとコウの2人がいた。
「マスコットボーイ君、今回はストリップ?」
「あらぁ、こっちの彼もなかなか可愛いわね…きゃあっ…!」
テツヤとマドカの間を緑色の火花が通り過ぎ、マドカをコウが庇う。
「危ないな」
「いきなり図々しいなぁ。お前等、誰?」
「ぅわっ!?」
「「「うわあぁぁ…っ!」」」
マドカとコウの2人は花火に火をつけ、仕返しとばかりにベニオ達に向ける。
「何でこうなるかな…!」
なまえもヤナの車椅子を押して火花の届かない場所に逃げる。
「取りあえず、ここなら大丈夫かな…」
車椅子から降りたヤナと共になまえは机の影に隠れる。
マドカ達とベニオ達の間で激しい攻防が交わされていた。
見ればなまえ達と同じく、ワコやサリナ達も机の影に隠れている。
「なまえ、大丈夫か?」
「スガタ。うん、私達は大丈夫だけど…」
なまえは相変わらず激しい攻防の続く4人を見て苦笑を零す。
タクトがベニオから花火を取り上げて止めようとするが、テツヤがタクトを取り押さえた拍子に花火の入った段ボールはタクトの手を離れ、バーベキューの金網に落ちる。
「「え…」」
「あ」
一斉に勢いよく火花を散らす花火の1つが寮の窓から中に入り、部屋が燃え上がる。
「僕の部屋…」
「そうね…」
攻防が止んだのは良いが、タクトの部屋が全焼してしまった。
寮の部屋が修復するまで、タクトはひとまずスガタの家に居候することになった。
「―まぁ、タクト君が無事で良かったね」
「あぁ」
なまえの言葉に、スガタが頷く。
「なまえ…」
「ん?」
「髪、まだ濡れてる」
スガタはなまえの手からタオルを取ると、髪を拭く。
「すぐ乾くよ?」
「とか言って、どうせ乾かさないで寝るつもりだろ…風邪ひくぞ?」
「う…」
反論できなくなったなまえはおとなしく髪を拭いてもらうことにした。
「―…なまえ」
不意にスガタがなまえを呼ぶ。
「ん?何?」
「あの人…ヤナさんの事、今もまだ好きなの…?」
スガタの問いに、なまえは表情を変える事無く、目を伏せる。
「…好きだよ。でも、今は友達としてって意味でね」
「…そう」
「もしかして、心配してくれてる?」
茶化す様に言うなまえにスガタは当たり前だろう、と溜め息混じりに言う。
「ヤナの事は好きだったけど、きっと一緒にいても、幸せにはなれないって思ったの…ううん。ヤナがそう教えてくれた…だから、後悔も未練も無いよ」
水気の無くなった髪に、なまえはありがとね、と言って扉へと向かう。
「…スガタ」
「…?」
「ヤナは我儘だけど、優しい人なんだよ…」
「…あぁ…そうだな」
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