Raum
「はっ…はっ…!」
衣の擦れる音と畳を踏む足音だけが道場の中を占める。
まだ外は薄暗く、人気はない。
シンドウ家本邸の道場で道場着を着たなまえは休むことなく竹刀を振る。
「…」
ツナシ・タクトが“銀河美少年”…?だったらこの時期にこの島に彼が現れたのは偶然か…それとも…。
なまえの表情に険しさが滲み、影が落ちる。
流れ落ちる汗が頬を伝って床に落ちる。
「随分荒れてるな」
腕を止め、声の方を見る。
「…スガタ」
スガタはなまえと同じ様に道場着を着て、戸を開けっ放しにしていた入口の壁に凭れている。
「早いね。この時間ならまだ誰も起きてないと思ったのに…」
「昨日はよく眠れなかったんだ」
そう言ってスガタは道場に足を踏み入れる。
「邪魔したかな」
「そんな事無いよ」
スガタはなまえと向かい合う様に立つと、竹刀を構える。
「久しぶりに、一緒に稽古しないか?」
「良いよ」
そう言ってなまえも構える。
「はっ!」
「はっ…!」
2人の掛け声と竹刀のぶつかる音が途切れることなく続く。
なまえと同じく、スガタの額からも汗が落ちる。
2人はスッと距離を取ると、体勢を整え礼を取る。
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…また腕を上げたんじゃないの?君」
「…そっちこそ」
2人は見つめ合ったまま口端をあげる。
お互いに言葉数は多くなくても、この空間は不思議と心地良い。
「…昨日、ワコが襲われた」
不意に切り出したスガタになまえは何も言わず視線を上げる。
「サイバディを狙う綺羅星十字団って組織に…タクトが、サイバディとアプリポワゼして助け出したそうだ」
「…ワコを守ってくれたから、タクト君は信用できる?」
「なまえ…?」
「スガタはどう思う?」
「君は?」
「こら。質問してるのは私…」
スガタは観念した様に眉を下げて小さく笑う。
「彼は信用しても良いと思う。彼はサイバディを狙う奴等とは違う…」
「そっか…」
なまえは僅かに俯く。
「そうだね…彼ならきっと、ワコを守ってくれる」
「スガタも気を付けてね。巫女じゃないからって狙われないとは限らないんだから」
「あぁ。そうするよ」
スガタはくす、と笑う。
「そろそろ帰るよ。学校の準備しないと」
「なまえ…!」
スガタは咄嗟に背を向けたなまえの手首を掴む。
「スガタ…?」
なまえは困惑した様にスガタを見る。
スガタははっとして手を放すと罰が悪そうに視線を逸らす。
「…後で、迎えに行く…から」
「へ…?う…うん。わかった。じゃあ、また後で…」
「どう、したんだ…」
1人になった道場でスガタは戸惑ったようにポツリと呟く。
さっき、何となくなまえが遠くに離れて行ってしまう気がした。
「…なまえ…」
スガタは先程なまえの手首を掴んだ手をギュッと握りしめる。
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