後ろの席は

「―ねぇ、ガラス越し、有りな人?」

休み時間、ガラスをコンコンと叩くと少年はそう尋ねた。

「有りな人よ」

そう言うと目を閉じ、ガラスに顔を近付ける。
距離が縮まり、ガラス越しに2人の口唇が重なる。

「ぅ…ぅわ…っ!?」

タクトは思わずがたっと椅子から立ち上がる。
相手の男子生徒はじゃーね、と去って行く。

「かっ…彼氏…!?」

「全然知らない子」

にこっと笑って言うカナコの返答に、タクトは脱力した様に椅子に座る。

「良くない遊びだと思います」

タクトの前の席に座る黒髪の少女―ニチ・ケイトが厳しい声音で言う。

「あら、お固いのね。決まったばかりの委員長さん?」

カナコは全く悪びれる様子もなく言う。

「良いじゃない。ガラス越しなんだから」

「ねぇ。ツナシ・タクト君よね?私、ワタナベ・カナコ。お近づきになれて嬉しい。貴方もガラス越し有りな人?」

「…どちらかというとナシか…」

タクトの言葉を遮って、先に言っておくけど、と左手を見せる。
その薬指にはいかにも高級そうな指輪が輝いていた。

「私、もう結婚してるの」


「あーらら。タクト君、完全にミセス・ワタナベに遊ばれちゃって」

「なまえ?」

教室に戻って来たなまえはワコの前の席に後ろ向きに座る。
暇潰しに音楽を聴いていたのか、首にはウォークマンをかけている。

「もしかして妬いた?ワコ」

「えっ…!?な、何で…っ!?」

「冗談だよ」

そう言って笑うと、ワコの口にお菓子を放る。
ワコは若干むくれた顔をしながらも、もぐもぐと口を動かし、美味しい…と呟く。

「はぁ…何なんだあの色気。とても同じ歳とは思えないよ」

ルリがため息交じりに呟く。

「ルリはミセス・ワタナベみたいになりたいんだぁ?」

「そりゃ同じ女としてあれは憧れるでしょー。ナイスバディでその上お金持ち!」

コンコンと、なまえの横のガラスを叩く音がした。

「ね。君はガラス越し有りな人?」

「おっ。此処にもいたか…」

「えぇっ…なまえ…っ!?」

ワコは頬を赤くしてなまえを見る。
なまえは不機嫌そうな顔をすると、ベーッと舌を出す。
男子生徒はちぇっと残念そうに舌打ちすると、去って行く。

「まぁ勿体無い。折角男の子からお誘いがあるんだから、1度くらい乗ってみるべきじゃないかしら?直接ではないのだから、特に問題は無いと思うわ」

なまえは苦笑を零す。

「あのね…私と君を一緒にするなって…」

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