臆病者の目に映る

「…」


「リョウスケさん?」

なまえは学園の廊下で立ち止まっているリョウスケに声をかける。

「…なまえか」

リョウスケはなまえを一瞥する。
なまえはリョウスケの視線の先を見る。

「あははっ!止めてってば、タクト君!」

「こら、タクト!」

視線の先にいたのはホースで水遊びをしているタクト達だった。
リョウスケはただじっと3人を眺める。

「―仲良しですよね、あの3人」

なまえの言葉にリョウスケはふっと笑う。

「お前もその“仲良し”の一員だろう。行かなくて良いのか?」

「あの3人は、あの3人でいる方が1番似合ってる気がするんです」

それじゃ、行きますね、と踵を返したなまえをリョウスケは目で追う。

「…あいつは」

「はい?」

なまえは足を止め、振り返る。

「…トキオは、今もお前の絵だけは描けないらしい」

「…知ってます」

「何故描けないのか、お前はもう知ってるんじゃないのか?」


「…あの人が描けないのは、私が“時計の針”だからですよ」

「時計の針…?」

なまえはくすっと小さく笑う。

「だから、時を止めた彼に私は描けないんです」


「…なまえ。お前は、トキオが好きなのか?」

「好きだって言ったら、リョウスケさんは私を軽蔑しますか?」

「…いや」

「―優しいですね。貴方は…」

そう言って去っていくなまえの後ろ姿を見つめながら、リョウスケは右目を細める。


「優しい、か…お前は俺を買い被りすぎだ。なまえ」
―俺は、臆病なだけだよ…。

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