神話前夜

「コルムナ」

―さぁ、約束だ。この船を渡して貰おうか。

「こいつはこの星で1番魔力を持った船なんだ!私はこいつが動くのを7000年もの間、待ち続けた!」

コルムナは魔女の力で身体の自由を奪われる。
魔女は高らかに、勝ち誇ったように笑う。

―お前はもうクレイスをその手に抱きたいとは思ってはいないようだし、夜の宝石は必要ないだろう?

だが、その瞬間、魔女の腹部には深々とナイフが突き刺さる。

「…今僕はこの船と一体化している。お前より大きな魔力を持っている」

―死ね!魔女め!

「…いよいよお前は船と一体になる。それが愛する少女を捨てたお前の運命だ、コルムナ」

最後にそう吐き捨て、魔女は死んだ。
そして、船と1つとなったコルムナはその後も魚の惑星の王で在り続けたが、人々に姿を見せる事はなく、コルムナの船は静かに眠り続けているという―。

クレイスの過去を聞いた少年マルクは驚きと哀しみにその瞳を染める。
そして、少女に再度問う。
君は何者かと。

「私達は“エントロピープル”。魔力を使わない者」

―君はかつてのコルムナの様に命のオーラの輝きを持った少年だ。
だから、クレイスの姿も見えるのだろう?


「―そして、この船を動かす力も持っている」

「え?」

―聞け。命のオーラの輝きを持つ少年よ。
私達エントロピープルは魔力を使わないと決めた銀河の一族だ。
巨大な魔力を持つこの船そのものの破壊、そして、船に偶然接触する命の生殺与奪の権限などはもとより私達には無い。
この船を君がどうするのか、私達には見守る事しか許されない―。

そして知りたい。
コルムナと同じ、船を動かせる力を持った君がこれからどうするのか。

エントロピープルの言葉に、マルクは優しく、愛おしげに微笑む。

「もし僕に命のオーラの輝きがあるのなら、それは船を動かす為のものではなく、彼女の笑顔を見る為のもの。
例え、ナイフを持っていたとしても、それは彼女を守る為です」

そしてマルクはクレイスに誓う。

―僕は君が大切だと思っている全てのものを、何があっても守って見せる、と。


そして2人の物語は続いて行く―。

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