飾られない想い
「―お嬢様、スガタ坊ちゃまがいらしておりますが」
「スガタ?良いよ。通して」
久しぶりに帰った分家本邸の自室で、床に置いたクッションの上に胡坐をかいてリンが持ち帰った絵を壁に凭れかけて眺めていたなまえは、メイドに短く答えると、再び絵を見る。
「…」
「珍しいな。此処に帰ってるなんて」
スガタは半開きのドアを確認程度に軽くノックしてから部屋に入る。
「ワコとデートだったんじゃないの?」
「もう終わったよ。今は、タクトとデートしてる」
「タクト君と?」
なまえは少し驚いた様に聞き返す。
「相変わらず複雑な三角関係だね…」
スガタは軽く肩を竦めたが、それだけで何も言わなかった。
「―その絵、飾らないの?」
スガタはなまえの隣に立つと、同じ様に絵を眺め、尋ねる。
なまえはスガタを見てから、再び絵に視線を戻す。
「…うん。まだ、飾らないよ」
「まだ…?」
「今はまだ、飾る時じゃない」
「…##NAME1##、君は…―」
スガタの言葉を遮るように世界が灰色に染まり、風に揺れていたカーテンがはためいたまま止まる。
「ゼロ時間か…!」
スガタははっとしてなまえを見る。
なまえは周りの景色と同じく、時間を止めている。
消え行く景色と共になまえの姿も消えていく。
―どうか…そのままで…。
視界が白に染まる中、スガタはギュッと拳を握り締める。
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