汝にその覚悟があるのならば
「―“グラウクローネ”」
「…」
「審判者のシルシを持つ者」
グラウクローネは何も言わず、スガタ―キングを振り返る。
振り返り際に、コツ、と靴音だけが響く。
口許だけでもわかる厳しい表情を浮かべるキングとは裏腹に、グラウクローネの口許にはうっすら笑みが浮かんでいる。
それは同情なのか、歓迎なのか、落胆なのか、嘲笑なのか―いや、そのどれにも思えた。
「何?“キング”?」
感情の無い声で尋ねるグラウクローネに、キングの指先がほんの微かにピクリ、と揺れる。
「あぁ、シンドウ・スガタの方が良い?」
「―…どちらでも」
冷たい声だ、とスガタは自分で思った。
“何か”を“演じる”のは得意だ。だが、
“今”の自分は何者でもない。
だからこそ、感情が籠らない。
「―仰せのままに。キング」
それでもグラウクローネは気にした様子もなく、むしろ、面白がっっている様子で笑みを深める。
「気になっているのでしょう?この仮面の“下”が―」
「―知りたいのなら剥げばいい」
仮面を剥ぐ―その意味は充分すぎると言って良いほど知っている。
そして、その選択が後戻りできないものだとも―。
「貴方にその覚悟があるならば―」
甘く囁く様な声。
仮面越しにでもわかる強い意志とゆるぎない覚悟。
それを持ち得ているからこそ彼女はそう言う。
「…1つ、聞く」
グラウクローネの予想通り、仮面を剥ぐ事をしなかったキングは、静かな声音で問う。
「―お前は“旅立ちの日”に、何を求める?」
「…ただひとつの永久を」
そう言うと、グラウクローネは再び靴音を響かせながら暗闇へと消えて行く。
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