秒針を回す

「―既にザメクは俺の手足。今の俺と戦うのはザメクと戦うという事。
そしてザメクの本当の力をお前達はまだ知らない」

ザメクを操り、その圧倒的な力を見せ付けたヘッドは高らかに、そして嘲笑う様に告げる。

「「「…!?」」」

「巫女の君達ならもう気付いてるんじゃないのかな?」

ヘッドはワコとケイトに目を向ける。

「目覚めたザメクは今飢えている。復活に必要なリビド-を吸収したくて身震いしている」

「―それを阻んでいるのが、零時間の檻だ」

「っ…!」

「零時間の封印を解けば、ザメクは本来のサイバディになる為にこの星のリビド-を全て吸い尽くす!」

「ダメっ…!そんな事したら、この星が死んじゃう…っ!」

「何ですって…!?」

「確かに、ザメクのキャパなら可能性は充分にあるぞ…!」

「それって…」

「人類が、滅ぶって事…?」

「っ…意味わかんねぇよっ!人類を滅ぼして、ザメクを手に入れて、それでお前はどうなるっ!」

タクトが叫ぶ様に問う。

「―皆水の封印を解き、第5フェ-ズとなったザメクは時間を自由に操れる」

「そして、そのスタードライバーである俺は、タイムトラベラーとなる!好きな過去を何度も繰り返せるんだ!」

「此所から先の未来は無くなるんだぞ―」

議長が言う。

「俺は全てを取り戻すよ、リョウスケさん。そして手に入れるんだ」

―なまえと共にね、と笑みを浮かべるヘッドに議長は僅かに顔を俯かせる。

「…まだ囚われ続けるのか、トキオ」

「―緊急動議!ヘッドの行動は綺羅星規約第11条に反します!グラウクローネと共に即時除籍処分を…!」

「ははははっ!」

ヘッドは堪えきれないとでも言いたげに声を上げて笑う。

「「「!?」」」

「つくづくおめでたい連中だな!」

「“旅立ちの日”を迎えるのは俺となまえだけだ!お前達は俺がザメクを手に入れる為の使い捨ての駒。
何が綺羅星だよ、馬鹿馬鹿しい!」

「黙れよっ!クソ親父!」

ヘッドの口元が不愉快そうに歪む。

「…喧しいガキだ」

「はっ…!」

「終わりだ!ツナシ家のサイバディッ―!」

タウバーンを切ろうとしたヘッドの手からタウバーンを守ったのは、ワコだった。

「あっ…ワコっ!?」

「―アプリボワゼ!」

表巫女の神殿から、皆水の巫女のサイバディ―ワァウナが姿を現す。

「!?皆水のサイバディか…!?」

「…ワァウナ」

なまえはポツリ、と呟く。同時に瞳の鋭さが増す。

―これが、最後。

「神殿から出て来るとはな。だが、俺にとっては好都合だ」

「あっ…!」

ザメクの影がワァウナを覆い、鷲掴みにする。

「ワコ―っ!」

「もう遊びは終わりだ、タウバ-ン。ザメクを我が物にすれば、こんな事も出来る」

タウバーンを囲む様に、19体のサイバディが姿を現す。
それらは全て、かつてタクトが破壊したサイバディ達だ。

「お前が破壊してくれたお陰で、全てのサイバディが今やザメクの僕だ」

「私のページェントが…!」

「アレフィスト…」

「くっ…うあぁぁ―!」

「―やれ」

ドライバーを乗せず、ただの虚ろなザメクの人形となって襲い掛かるサイバディに、タクトはぎりっ、と奥歯を噛む。

「此所から俺達だけの時間が…永遠の夢が始まる!」

ザメクはワァウナをぎりぎり、と締め付ける。

「ワコ…!」

「さて、いつまで耐えられるかな?」

「っぅ…!」

なまえは静かに眺める。
その瞳には歓喜も絶望も、狂気すらも見えない。
感情を隠している訳ではない。
無―それこそが今のなまえの素直な感情だからだ。


―こんなものではない。

―こんな場所ではない。

―目指している先は、まだ、もっと向こうなんだ…。

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