一面の星空
瞼の向こうに眩い光を感じ、重たく闇に沈んでいた意識が浮上する。
「―…」
視界に入るのは一面の青色の世界だった。
さっきまでと違うのは無数の瓦礫が漂い、星が世界を彩る様に煌めいている事だ。
「…スガタ…」
隣を見れば、スガタはなまえと手を繋いだまま目を閉じている。
そっと頬に触れればちゃんと生きている温もりに、なまえは小さく、良かった、と零す。
「…」
―此処、は…。
「大丈夫?なまえちゃん」
なまえは声の方へ目を向ける。
「タクト、君…」
いつもの様に笑みを浮かべたタクトは安堵の表情を浮かべる。
見れば、全身傷だらけだ。
その姿に全てを理解する。
恐らく自分達を助ける為に、彼が皆水の巫女の封印を解き、そしてザメクを倒したのだ。
「…」
なまえはタクトから漂う瓦礫に目を向けると、ゆっくりと目を閉じ、ふっ、と小さく息を吐き出すように笑みを浮かべる。
―ホント…。
「無茶するね…」
「君やスガタ程じゃないよ」
「くす…それも、そうだね」
生きたいとは望んでいなかった。
その筈なのに、今感じるのは落胆よりも、安堵で、それが自分自身ですら気付かなかった本音の様で、思わず自嘲の笑みが零れる。
繋いだ手に力がこもり、スガタに目を向けると、蜂蜜色の瞳がゆっくりと開く。
「…なまえ…」
「スガタ…」
スガタはなまえから、その後ろにいたタクトに目を向ける。
「…タクト…僕達は…」
「何も言うな」
「―弱きを守れってのが、家の家訓だ」
なまえは小さく笑う。
もう、認めるしかない。
「…君みたいに、何にもかき消されない輝きを持った人が、ホントの強さを持ってるんだろうね…タクト君」
タクトはいや、と首を軽く横に振る。
「大切なものを守ろうとする心が、未来を信じる気持ちが、きっと輝きなんだ。
僕だけじゃない。皆、心の中に持ってる」
なまえは少し目を丸くして、スガタと顔を見合わせると、目を細めて笑う。
「そっか…そうだね…」
「凄い空だ…」
「うん…」
スガタの呟きになまえも頷く。
「綺麗な、星空…」
―世界はもう、灰色じゃ、無い。
「僕達はこれから、これよりもっと凄い空を沢山見るさ―」
タクトの言葉を耳に入れながら、なまえはこの景色を瞼の裏に刻みつける様に目を閉じる。
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