僕も世界の一部として

「―君がアケノ・ナマエさんだね」

へ、と気の抜けた声をあげて振り返ると、茶色の髪に、肩にキツネらしき動物を乗せた少女がいた。
青色のネクタイという事は3年生だ。
何故見知らぬ上級生が自分の名前を知っているのだろう、と不安を抱きながら頭の中でぐるぐる考えていると、それを読み取ったかの様に、少女は、君の事はタクト君やワコ達から聞いているよ、と告げる。

「ツナシ君達?あの、失礼ですけど、貴女は…?」

「私はエンドウ・サリナ。3年で、演劇部の部長をしているの」

「あぁ、演劇部の部長さん!」

そういえば何度か話の中で出てきたな、と思いだし、少女の正体が明らかになった事でナマエは少しほっとする。

「あ、アゲマキさん達に用事ですか?」

「いや。今日は君に会いに来たんだ」

思いもよらない答えに、ナマエはきょとん、と目を丸くする。

「え、私…?どうして…」

「サリナ部長!どうしたんですか?」

廊下の向こう側から歩いてきたワコ達に、サリナはよ、と軽く右手を上げてから、再びナマエに目を向ける。

「タクト君達に、どうやら君は面白い感性を持っているらしいと聞いてね」

「豊かな感性は演技をする上でも重要なものだ。と言う訳で、君を演劇部に勧誘しに来た!」

どうかな?と手を差し出してくるサリナに、ナマエは少し困った様に眉を八の字にして苦笑を零す。

「折角誘ってくれて嬉しいんですけど、私、もう写真部に所属してて…それに演技とか苦手なので、だから、すみません…」

「うーん。そうか…それは残念…まぁ、気が向いたら見学だけでも来てくれ。部員は随時募集中だ」

「ありがとうございます」

キュー、と小さな鳴き声をあげて、サリナの肩に乗っていたキツネらしき動物がたたっ、と降り、ナマエの足や腕を上って、肩に乗る。

「うお…っ!な、何…!?」

「あっ、ダメだよ副部長いきなり乗ったりしちゃ!驚いてるじゃない!」

「ふ、副…?」

「あ。この子、副部長って呼んでるの」

副部長、と呼ばれた小ギツネは応える様にキュー、と鳴き、ナマエの首元に頭を擦り寄せる。

「どうやら君の事が気に入ったみたいだ」

「えっと…ありがとう、ございます…?」

サリナはくすくす、と小さく笑い、何で敬語?と零す。

「いや、副部長なんで…一応」


「くすくす…やっぱり君は面白いね」

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