ハプニング→決闘
「それでは皆さん、よろしくお願いしまーす!」
「きたない…」
苔だらけのプールに、なまえはげんなりと呟く。
柱の向こうにドサッと緑の尾が覗く。
「「「ぅわぁっっ…!?」」」
3人は思わずスガタとタクトの背後に隠れる。
「そのプールはワニータ男爵のお家なの。大丈夫。ワニータ男爵はとても大人しいから」
「ホントにぃ…?」
タクトも怪訝そうにカナコを振りかえる。
「人妻さんは何してんのかな」
デッキブラシでプールの底を磨きながら、不意にタクトが尋ねる。
「きっと株の売買よ。ワタナベさんがパソコンのキーを叩く度に、小さな国の国家予算位が動いてるんですって」
「へぇ。そんな彼女が何でこの島に来たんだろうね」
ブラシを動かす手を止め、スガタが言う。
「そーいうスガタ君の横にもいるけどね。キー叩く度に大儲けする女子高生」
ルリはそう言うと、スガタの横でヘッドフォンを耳に当てながら掃除をしているなまえに目を向ける。
「ははっ…」
「え?」
ヘッドフォンのせいで今迄の会話が聞こえていなかったらしいなまえはタクトの視線に顔を上げる。
「へ?」
なまえとタクトはお互いにキョトンと見つめ合う。
「何?私の顔何か付いてる?」
「なまえちゃんって…何者…?」
「一応普通の人間のつもり…っていきなりそんな事聴かれても完全に意味不明だから。タクト君」
「なまえちゃんも人妻さんみたいに家で株の売買とかしてるわけ…?」
タクトの言いたい事を理解したなまえはじとっとルリを見る。
「…また色々ペラペラ喋ったなぁ、ルリ」
「だってホントの事じゃん。ね?スガタ君もそう思うでしょ?」
「くすくす…そうだね」
「すぐスガタに同意を求めるな」
なまえは小さく溜息をつく。
「そんな凄い事じゃないよ。私のは父さんの手伝いみたいなもんなんだから。ほら、この話はもう終わり。君達は口より手を動かしなさい」
「「はーい」」
4人は再び掃除を再開する。
「あっ…こら、副部長!」
ワコの声と共に副部長がこちらに向かって走って来る。
「わあぁぁっ!こっち来た―っ!」
なまえは絶叫してデッキブラシを放り投げると、思わず1番近くにいたスガタに飛びつく。
「大丈夫だよ」
「うぅ…っ」
スガタはポンポンと子供にやる様になまえの頭を撫でる。
ワニータ男爵に追われてプールを飛び出した副部長はカナコの方に駆けて行き、ネズミと勘違いしたカナコはこちらも悲鳴をあげ、テーブルごとひっくり返す。
「タカシ!そのネズミを片付けてっ!」
「お任せを!」
シモーヌの声にタカシはデッキブラシを手に副部長を追いかける。
「何だ?」
再びプールに戻って来た副部長はワコの頭に上る。
副部長の後を追ってデッキブラシを振り上げるタカシに、なまえ達は目を瞠る。
「危ない…!」
「ワコ…っ!」
なまえとスガタは声を上げる。
「へっ…きゃっ…!」
ワコはギュッと目を閉じる。
躊躇なく振り下ろされたデッキブラシをタクトがワコに当たる寸前に、自分のデッキブラシで防ぐ。
ワコは思わず尻もちを付き、スガタやなまえは思わず安堵の息を零す。
「…もう良いだろ」
タクトは厳しい声音で言う。
「どいて下さい!」
タカシは再びデッキブラシを振り下ろす。
「…やるねー」
なまえは小さく呟く。
スガタはちらっと目だけでなまえの方を見る。
「…」
それを見ていたカナコはパチパチ、と手を叩く。
「すごいわ。タクト君も心得があるようね」
「どう?2人で試合してみない?」
「…それもバイトの一部?」
タクトの問にカナコはくすっ、と笑う。
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