夜に1人僕は泣いていた
誰も、幸せにならない恋だった。
沢山沢山泣いて、沢山傷つけて、沢山傷つけられて、笑顔よりも涙の方がきっと多かったんじゃないかって思うくらい沢山泣いた。
それでも君が好きだった…。
それだけが、最後まで守ったその気持ちだけが、たった1つ、今の私を創ってる。
神様、お願いです。
彼に愛して欲しいとは願いません。
だから、ただ、あの人の側に居させてください。
―ほんの少しの時間でいいんです…。
いつか、彼が夢から覚めて、1人ぼっちじゃなくなる時まで…。
「―欲しい物があるなら躊躇うな!少女はサムにそう言った」
「ついにイカ大王の居場所がわかったけれど、そこは1年中激しい嵐による危険な大しけに囲まれた海だったから、流石のイカ刺しサムも船出を躊躇った。
けれど、躊躇うサムを少女は叱った」
「イカ刺しサムは少女を海辺の小屋に残し、1人危険な海へと漕ぎだした」
話し終え、ヘッドは薄く笑みを浮かべ、反応を窺うようになまえの顔を覗き込む。
「…その少女は、強いのね…」
1人は寂しいのに、と零すなまえに、ヘッドはほんのわずかに表情を歪める。
膝の上に横抱きにするように座らせたなまえはヘッドの胸に頭を預け、少し俯いているせいで表情はあまりよく見えない。
顔を見たところでそう反応を示しているとも思えないが、それでも、顔を見たいと思う気持ちは湧く。
顔を見て、目を合わせて、額をくっつけて、指を絡めて、唇が重なるほど近付いて、触れたい。
彼女の温もりを、もっと、もっと近くで感じたい。
「―…」
―触れれば、満たされると思っていた。
空っぽの人形でも、愛を囁いて、抱きしめれば、いつか、言葉を返して、背中に手を回してくれるかもしれない…。
眠りから覚める様に、あの子が戻ってくるんじゃないかと―そう、思っていた。思っている。
―それでも、渇く…。
心の奥底の欲望の塊の様なものが、泣く様に叫ぶ。
タリナイ…。
ミタサレナイ…。
コレハ、チガウ…。
「なまえ…」
天井を仰ぎ、少しだけ泣きそうに顔を歪めて、ヘッドはなまえの身体を縋りつくように抱きしめる。
―旅立つサムの帰りを待つ少女は、こんな気持ちだったのだろうか…。
言い知れぬ不安と、いつ終わるとも知れない孤独。
―どうして、こんなにも君の色をしているのに、世界は俺を1人にするんだろう。
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