デイゲーム
空を自由に飛べる夢は、凄く残酷な夢だ。
「「「きゃあぁぁ〜っ!!」」」
黄色い声、とはこういう事をいうのだろうと思う。
頭にキンキンと響く甲高い声に、ナマエは僅かに表情を歪めて片耳を押さえる。
快晴の空の下、南十字学園の球技大会は開幕した。
各学年、それぞれの競技場へと移動し、各試合が始める。
1年生の競技種目は野球。
グラウンドに各クラスのナインが整列し、試合開始の合図で各ポジションにつく。
「―ストライク!バッターアウトッ!」
1組、イチゴスターズのピッチャー、タクトのピッチングはことごとくキャッチャーのミットに収まる。
「よーし!あげてこうぜ!」
輝くばかりの笑顔に女子生徒達はまたも黄色い歓声をあげる。
目がハートになっているのはきっと気のせいではない筈だ。
美少年は何をしても華があるな、と苦笑を零しながら思う。
「あれ?」
バッターボックスに立った少女に、ナマエはきょとん、と首を傾げる。
雰囲気は随分落ち着いている様だが、髪の色や面差しが、先日出逢ったヨウ・ミズノという少女にそっくりだ。
少女はバットを大きく振りかぶると、思いっきり振り切る。
カキーン、と気持ちのいい音と共にボールは高く飛び、点数番に当たり、落ちる。
「ホームラン…!」
やるなぁ、と感心しながら淡々とホームベースに返ってくる少女を目で追う。
「マリノー!やったねー!」
ベンチから上体を乗りだして声をかけるミズノに、マリノと呼ばれた少女は小さく微笑み返す。
あれだけ似通った容姿に同じ歳なのだから、どうやらあの2人は双子の姉妹なのだろう。
ナマエはしかし似てないな、とぽつりと零し、再び試合に目を向ける。
「次は4番か…」
マリノのネクストバッターはこれまたいかにも打ちそうな雰囲気の少年だった。
少年はタクトの投げた球を大きく打ち飛ばすが、スガタがキャッチし、アウト、攻守交代になる。
「はー…暑いなぁ…」
―目が逸らせないのも、ぞわりと肌が粟立つのも、全部全部、暑さのせいだ。
目を覚ました僕の背中に、翼なんて、生えてはいないのだから―。
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