虹の向こう
その向こうに行けば、どんな願いも叶うそうだ。
「…暑い…」
目を閉じていても、日差しで瞼がちりちりする。
肌が焼かれる様だ。
「…」
ゆっくりと目を開け、太陽から目を逸らす様にナマエはベンチについた手に視線を落とす。
『賭けをしようか』
耳の奥で、あの男(ヒト)の声がした。
とても楽しそうな、思わず怯んでしまうほどの、深い笑みを浮かべた、彼の。
とても不思議な人だ。
笑顔で距離を保っているのかと思えば例の賭けの様にいきなり内側に踏み込んできたりする。
そして、それに対して戸惑いはしても不快には思っていない自分がいる。
「どうしてかなぁ…」
あの人といると、つい心を開いてしまいそうになる。
誰にも見せたくない、弱くて、情けない自分を見せてしまいそうになる…。
頼っても大丈夫なのだと、何かが囁きかける。
それが何故なのか、自分でもよくわからない。
あの人の側にいると、わからない事ばかりだ。
「―何が?」
「うおっ…シンドウ君か、びっくりした…」
びくり、と肩を揺らして振り向いた#NAME2#にスガタは一瞬きょとん、と目を丸くして、それからくすり、と口許に小さく笑みを浮かべる。
「写真は撮れた?」
「うん。大体は」
「そう」
2大イケメンと名高いタクト、スガタのベストショットはきっと女子生徒達に欲しい欲しいとせがまれるのだろうな、とこの先の展開が安易に読めて、思わず苦笑を零す。
「あれ?そういえば、ワコとツナシ君は?一緒じゃないの?」
「いつも3人一緒な訳じゃない。僕だってたまには1人でいる事もあるさ」
そう言ってスガタは#NAME2#の隣に腰を下ろす。
白い肌のせいか、纏う雰囲気のせいなのか、この炎天下にあってもこの少年は涼しげだ。
「そう?私の中じゃ、シンドウ君達はいつも3人でいるイメージしかないなぁ」
「偏見だな」
「無自覚とも言う」
ナマエは悪戯っぽい表情を浮かべて言う。
「それこそ偏見だな」
スガタは相変わらずすまし顔で事もなげに言った。
#nam2#はくすくす、と小さく笑う。
何だか変なやりとりだと思った。
内容は取るに足らない下らない事なのに、楽しくて、わくわくする。
「そろそろ後半始まるね。戻ろっか」
ナマエはスガタを促し自分もベンチから立ち上がる。
「―どっちが勝つと思う?」
立ち上がりながら尋ねるスガタに、振り返ったナマエは一瞬きょとん、としてから、にやり、と口許に笑みを浮かべる。
「勿論、うちのチームでしょ?何たって、期待のイケメンピッチャーと君がいるんだからね」
「イケメンは関係あるのか?」
「モチベーション上がるでしょ。応援の!」
「よくわからないな。そういう感覚」
「ほら。そういうのが無自覚っていうんだよ!」
「は?」
ますます意味がわからない、とばかりスガタはこてん、と軽く首を傾げる。
その仕草に、嫌味な奴め、と心の中で毒づく。
それでも2つの影は同じ距離を保ちながら、グラウンドへと戻って行く。
―絵本を捲ると、何時の間にか最後の1ページだったんだ。
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