「夢の中で」と囁いた

君に会いに行くよ。
夢の中で。



「―最近、放課後忙しそうだな。何か面白いものでも見つけたのか?」


教科書とノートをトントンと机に軽く落として揃えながら、シンドウ君の言葉の心当たりを探す。
答えはすぐに見つかった。


「面白い人に会ったの。それで話してたら何か仲良くなったんだ」


「へぇ」


「で、絵が思いつかなくて暇だって言うから、たまにお邪魔して色々お喋りしてるんだ」


「絵?美術部員?」


「どうかな?そもそも学校にもあまり行ってない人みたいなんだよね」


意外にも食いついてきた。
てっきりただの世間話だと思ってたのに。
今の会話の中に何かひっかかるものがあったのだろうか。


「…それって、もしかして、僕等よりも少し年上の飄々とした人?髪が長めの」


言葉を記憶の中のミヤビさんの姿に当てはめていく。
当たっているかは兎も角、彼はその特徴にぴったり当てはまる。
そうなると今度は新たな疑問が湧く。


「シンドウ君知り合い?」


全く接点のなさそうな2人なのに、何処かであったのだろうか。
考えてみれば、小さな島なのだから年齢は関係なく皆知り合いみたいなものなのかもしれない。


「まぁ。何度か話をしたくらいだ」


小さな島云々は関係なく、偶然知り合って、しかもそれはごく最近の事らしい。
それなら、尚更彼があの人にこんなにも興味を示してるのか気になる。
きっとただの顔見知りとかなら絵の話をしただけで話題に上げたりしない。
シンドウ君みたいな人なら尚更だ。


「あ。もしかして、また絵を描くきっかけになったって言ってた男の子ってシンドウ君の事かな?」


そういえばそんな話をしていた。
その男の子と話をして、また絵を描こうと思ったって。


「そんな話を?」


少し驚いたような顔で聞き返すシンドウ君にうん、と頷く。
どういう状況で2人が会ったのかは知らないけれど、人とつるんでいる所を見た事のないあの人の事だからきっと1人でいる時に会ったんだろう。
だからそういう"他愛無い話"をする誰かがいた事が意外だったのかもしれない。


「話してたら色々考えさせられたって。
だからまた描いてみようと思ったんだって」


「…そう」


何の話してたの、と尋ねると大した事じゃない、と返される。
突き放された感も若干あるが、それよりも、彼の話題をこれ以上広げたくないようにも感じだ。
こんなに関心を持ってるみたいなのに。
嫌いなんだろうか。
今聞いたとしても当然みたいにはぐらかされるのは目に見えている。
今は良いか、と自分に言い聞かせる。



出会いは必然だった。

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