木陰の目論見

「目の保養だねぇ」


中庭の隅の木陰の下でなまえは呑気に呟く。
なまえの視線の先ではタクトやスガタ、ワコといった演劇部の面々が準備体操をしている。
そしてその面々を一目見ようと校舎の窓からは男女問わず、生徒達が顔を出していた。

「―学校中の注目の的ね。彼等」

「ミセス・ワタナベ?」

「マナセさんは演劇部には入部なさらないの?中等部の頃は所属なさっていたと聞いたのだけど」

なまえは少しうんざりとして溜息混じりに薄く笑う。

「入部なさらないよ。演劇は中等部で終わりにしたの。今は、やる事が色々と立て込んでるし」

「色々と、ねぇ…」

カナコは含んだ笑みを浮かべる。


「―ねぇ、マナセさん」

「ん?」

「綺羅星っ!」

「綺羅星っ!」

カナコに応える様になまえも目許に手を翳す。

「…頭取か」

普段のなまえからは考えられない程の冷たく落ち着いた瞳に、カナコは口端を上げる。

「やっぱり、グラウクローネは貴女だったのね」

そう言ってカナコは笑みを深める。


「この前は残念だったわね」

なまえはスガタと組んで準備運動をしているタクトに目を向ける。

「…銀河美少年」

カナコはタクトを見て、僅かに目を細めた。

「…彼1人に、我々綺羅星が連戦連敗…それほどまでに第2フェーズと第3フェーズの差は大きいものなのかしらね」

「…我々の連敗がフェーズによるものか、はたまた彼の実力によるものなのか…いずれわかる事よ。日死の巫女の封印を破り、第3フェーズに移行すれば、ね」

なまえは手を頭の後ろで組み、木の幹に凭れる。

カナコはくすっと笑う。

「そうね…」

「―貴女とお喋り出来て楽しかったわ」

「私もだよ。ミセス・ワタナベ」

##NAME1##は木に凭れ、目を閉じたままそう言う。
カナコは気にした様子も無く、先程と同じ様に小さく笑うと、踵を返す。
足音が遠ざかり、完全に聞こえなくなった後なまえは目を開く。


「…私達の実力がどうであろうと、計画が遂行されれば何の問題も無い」

“旅立ちの日”を迎えられれば、それで良い…。


ヘッドフォンを耳に当て、スイッチを押そうとした瞬間、地面が揺れる。

「地震…?」

地震はすぐに治まり、なまえもほっと息をつく。

「何だったんだろ…今の地震…」

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