呟きは白に抱(いだ)かれて
「なまえ様、そろそろ起きないと…」
部屋はシン、としていてなまえの姿は見当たらない。
「なまえ様?」
リンはもぬけの殻となっている室内を見渡す。
「いない…」
制服や鞄もそのままの所を見ると、学校には行ってないのだろう。
「あ…」
ふとベッドサイドのデジタル時計の日付を見てはっとする。
「そういえば…今日、ですね…」
―気にしない様にしてたら、案外気がつかないものね…。
リンは小さく溜息を付く。
あの方が1年で1番嫌いな日…。
1年で1番苦しそうな顔をする日…。
「…早く、明日になれば良いのに…」
学校に欠席の連絡をしておかなくてはなと頭の片隅で思いながら、リンは静かに呟く。
『なまえ、スガタ、お前達は―だ』
耳に残る。
『今迄秘密にしてきて済まない。だが、これはこのシンドウ家に生まれた者の宿命なんだ。お前達にはまだ難しいかもしれないが、わかって欲しい』
忘れようとするのに、思えば思うほど声は繰り返し頭の中で響いて…。
『これは生まれた時から決められた運命なんだ』
―そしてまた、私は逃れられない…。
「…それが、運命」
なまえは感情のこもらない声音で呟く。
そこはなまえの身長の何倍もの高さの本棚が幾つも立ち並び、まるで図書館の様だった。
なまえの膝にも、開かれた本が乗っている。
静かなせいで、ページを捲るたびにその音がやけに大きく聞こえる。
ふいにページを捲る手が止まり、なまえはパタンと本を閉じる。
「…今日、か…」
私とスガタが産まれた日。
そして、私とスガタが1人ぼっちになった日…。
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