解き放たれた魚

「…行くの?」


白いワンピースに帽子を被った少女は、なまえを振りかえる。

「貴女は…はい。私、此の島を出る事にしたんです」

少女―気多の巫女の顔は少し寂しそうながらも、何処か晴れ晴れとしている。


「好きだったんだね。ヘッドの事…」

「はい。でも…」

気多の巫女は一旦言葉を切る。

「私では、ダメだったんですね。きっと最初から…私はあの人の事が好きだったけど、もう決めたんです」

「そっか…」

「貴女は、何処かあの人と似てます。多分、気付いてないかもしれませんけど…」

「そう?私は似てないと思うけど」

なまえは小さく笑う。
気多の巫女も微笑む。

フェリーの出港時間の合図が鳴る。

「それじゃ。行きますね…」

「…私が言うのもなんだけど、元気で」


「貴女も、お元気で。シンドウ・セツナさん」

「さよなら。“サカナちゃん”」

「はい…」

気多の巫女はもう1度振り返り微笑むと、背を向け、フェリーに乗り込む。


「…イカ刺しサムは、銀河の世界に旅立てたのかな」

遠ざかるフェリーを見送りながら、なまえは呟く。

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