2人の足跡
《pipipi―》
「…」
画面に表示された名前に、なまえは少し迷ってから通話ボタンを押す。
「…もしもし」
《話したい事があるんだ。5年前の、あの場所に来てくれないか…?》
「…わかっ、た。待ってて」
電源ボタンを押す。
「…リン。少し出かけてくる」
「行ってらっしゃいませ」
家を出てしばらく歩いた所でなまえは足を止める。
そこは海だった。
時間のせいか人気は無く、おそらく今いるのは自分だけなのだろう。
波風がなまえの青い髪を揺らす。
「…」
なまえは静かに暗い海を眺める。
「…何で、私を此処に呼び出したの?」
不意に口を開き、そして後ろを振り返る。
「…スガタ」
「…」
スガタは足を止め、なまえをじっと見つめる。
2人の同じ色の瞳が重なる。
2人の表情からは感情は読めない。
最初に沈黙を破ったのはなまえだった。
「…何?話って…ぅえっ!?」
スガタはなまえの手を取ると、自分の胸に押し付けるように抱きしめた。
なまえは目を丸くした。
「え…あ、あの。放し…」
「放さない」
「、スガタ…?」
「…僕から、逃げるな」
「え…」
「…僕も、もう逃げないから。ちゃんと向き合う。自分の運命とも、君とも…」
なまえは驚いた様に目を見開き、それから僅かに目を伏せる。
なまえは身体を離し、真っ直ぐスガタを見る。
「じゃあ、私も逃げないよ。自分の運命からも、君からも」
「…あぁ」
「―覚えてる?5年前の誕生日、2人でこっそり家を抜け出して、こうして浜辺散歩した」
2人で並んで浜辺を歩きながら、スガタが懐かしむ様に言う。
「うん…あの時、腕時計持って、0時丁度に2人でおめでとうって言ったんだよね。
で、家に窓からこっそり入って、凄くドキドキした。」
「今思えば、あの時だけは僕達は姉弟でいられたのかもしれない…」
なまえは静かにそうだね、と言った。
「―ね、スガタ」
「ん?」
「誕生日おめでと」
スガタは思わず目を見開いた。
「少し遅れたけど、やり直し」
「なら、君もおめでとう。なまえ」
なまえは嬉しそうに微笑むとうん、と頷く。
それから少し歩いて、なまえは足を止める。
「きっとこの先も、誕生日は好きになれないと思う…君とも、姉弟には戻れない…」
「…」
スガタの瞳に僅かに影が落ちる。
スガタを見るなまえの表情が僅かに歪む。
「…どんなに戻りたいと思っても、多分、無理だと思う」
「…スガタと姉弟である事は変わらない。
でも、私達は姉弟として一緒にいる事は許されないし、そうあろうと足掻くのはお互いに傷つくだけだ」
「…」
「ごめんね…」
「わかった…だけど、せめて誕生日だけは、双子でいさせて欲しい…」
なまえはスガタの手を取ると、再び歩き出す。
「そうだね…1年に1回位なら、良いよ…君と姉弟に戻っても」
スガタは何も言わず笑みを浮かべると、なまえの手を軽く握り返す。
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