バニシングエージ
「…何なの、あの総会は」
薄暗い廊下を歩きながら、グラウクローネは口を開く。
「面倒臭い代表代行が決まったのは良いけど、彼女を代行に据えて大丈夫なのかしらね」
「―さぁな。だが決まった以上彼女はバニシングエージの代表だ。それなりの扱いをしてやれ」
「“それなりの”、ね―」
グラウクローネは思惑ありげな笑みを口許に浮かべる。
2人は廊下の先のバニシングエージの隊章の描かれた扉を開け、中に入る。
ジャズが流れるバーの様な部屋だった。
議長はジュークボックスの音量を絞る。
既に部屋にいた3人の青年が顔をあげる。
「真の綺羅星―」
議長は目許に手を翳す。
「「「「バニシングエージ」」」」」
4人も同じく綺羅星のポーズを取り、返す。
「マンティコールはいないのか?」
「いる訳ないでしょ」
スティックスターが答える。
「この部屋の事は教えてません」
ソードスターが言う。
「そうつれなくするなよ。我がバニシングエージの代表サマなんだから」
キャメルスターが皮肉っぽく言う。
「アインゴッドのドライバーになれたって事は、アインゴットの部屋に一晩中いたって事?」
スティックスターがダーツを投げる。
「凄いねぇ。女の子だったら絶対に耐えられないってウィンドウスターが言ってたのに―」
「でもあの女の子どっかで見た事あるんだよなぁ。うちのクラスの子かも」
「精々彼女を大切にする事だ。旅立ちの日を迎えるためには日死の巫女を探し出さねばならない。その事実を忘れるな」
「そう…日死の巫女を探し出してくれるなら、有り難い話ではある」
スティックスターがコンコン…と缶をダーツの先端で軽く叩く。
「缶ジュースを飲むためには缶が必要だ。さて、その缶に感謝しつつも、空き缶になったら捨てれば良いと思う人?」
4人共手をあげる。
「でもどうします?」
「第3フェーズまで待つのはだるいなぁ」
そう言うとスティックスターはダーツを投げる。
「実際ヘッドは何やってんの?グラウクローネ、お前は何か聞いてないのか?」
「さぁ。何も聞いてないけど?」
「彼女が知らないなら、誰も知らないでしょ」
「だが、今のままの第2フェーズの力では銀河美少年に勝てないと思っているのは確かだ」
「…悪い癖が出たわね」
「弱気なヘッドのはこのまま永遠に休んで貰った方が良いんじゃない?」
キャメルスターが言う。
「―自分は第2フェーズでも勝てると思う人?」
再び議長を除く4人が挙手をする。
「誰から行きます?」
ソードスターが尋ねる。
「これで決めよう―」
そう言うスティックスターの手にはダーツがある。
「お前はやらないのか?」
キャメルスターがグラウクローネに尋ねる。
「私は良いわ。貴方達でどうぞ」
「やらねーのかよ」
「後悔しますよ?」
「楽しみは取っておく主義なの」
3人はダーツを投げ、スティックスターのダーツが中央に突き刺さる。
「…」
「ん…?」
「リョウスケさん、どうしたの?」
議長はダーツボードの隣に立てかけてある絵画を見ていた。
「―此処に置いておくと、大事な絵がダーツボードにされそうだ」
そう言うと絵画を取り外す。
「ただの絵でしょ?」
キャメルスターが言う。
「この世にある絵は、全てただの絵だよ―」
「…」
グラウクローネは“R”のイニシャル入りの絵画を見る議長を黙って見ていた。
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