反転世界

「―うん。うん。そう。わかった」


電話に応えながらふとガラスの向こうに目を向けると、庭の茂みが不自然に動いている。

―何だろ?

「わかった。待ってるね。うん」

電話を切り、なまえは庭に出る。

「(不審者?にしてはあからさま過ぎる…)」

「見つけたぁ!」

「へ…」

「お」

「「ぅわぁ…っ!?」」

何かに飛びつかれ身体が傾くと同時に世界が反転し、背中に衝撃が走る。

「痛たた…」

「なまえ…!」

「なまえ様!」

悲鳴と物音にスガタやリン達が駆けつける。

「何があった!って、え…?」

「ミズノ、ちゃん…?」

なまえを押し倒す様にして馬乗りになっていたのはサーモンピンクの髪の少女―ミズノだった。

「タクト君っ!」

ミズノはタクトに気付くと目を輝かせた。

「ミズノちゃん、とりあえずどいて欲しい…」

「あっ!大丈夫?ごめんね。僕、間違えちゃって…」

ミズノは申し訳なさそうな顔でなまえに謝る。

「良いよ。何で此処に?」

「そうそう!実は帰り道でね…」

「わんっ」

「わん?」

足元を見るとミニチュアダックスフントの子犬が尻尾をふってこちらを見上げていた。

「わんわんっ」

「ぅわァァ…っ!犬ー!」

なまえはリンに抱きついた。
事情を知ってる4人は苦笑を零す。

「おぉ!そこにいたのかぁ!」

ミズノは嬉しそうに笑うと、子犬を抱きしめる。

「ミズノちゃん、この子犬追いかけて此処に来たの?」

タクトが尋ねると、ミズノは大きく頷く。

「うんっ」


「あれ?この子、足怪我してるみたい…」

ワコが指さす先を見ると、確かに前足に傷がある。

「何かに引っ掛かって怪我したのかな…?」

「リン…この子、手当てしてあげて」

なまえはリンから離れる。
リンはミズノから子犬を受け取る。


「―これで良し。消毒もしましたので2,3日で治ると思います」

「ありがとう〜!良かったね!」

ミズノは思い出した様にしゅん…と暗い顔になる。

「でも、僕ん家君を飼ってあげられないんだぁ…」

「くぅーん…」

「「「…」」」

何とも言えない光景に先に耐え切れなくなったのはなまえだった。

「はぁ…わかったわかった。家で飼ってあげるよ、その子」

「ホント!?なまえちゃん!」

「ひぃっ…そんな近付けないで…っ!」

ミズノはあ、ごめんね、と言う。

「なまえ…大丈夫なの…?」

「心頭滅却すれば火もまた涼し…」

「言いたい事は何となくわかったけど…」

ワコは苦笑する。

「大丈夫だよ。頑張ってみるから…」

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