風に導かれて

なまえはカナコ主催の親睦パーティには行かず、夕暮れの道を1人歩いていた。
サァ…ッと吹いた風が夕焼けに染まる髪を撫でる。

「…」

なまえは僅かに目を伏せると、今来た道を引き返す。
そしてその足は海の近くに隣接する公園の白い階段を上ると、ちょっとした展望台に出る。
そこには1つの人影があった。
手でフレームを作り、背を向けて反対側の階段から去って行くスガタをその中に写している。


「―君は美しい少年だな。君が美しい少年で本当に良かった」


「君もそう思わないか?なまえ」

スガタが見えなくなると、人影―ヘッドは後ろを振り返る。
なまえは呆れたように小さく笑うと、ヘッドに近寄る。

「私は君も充分“美しい少年”だと思うよ?」

ヘッドはくす…っと微笑む。

「そうかい?嬉しいな…」


「そろそろくる頃だと思っていたよ…よく此処がわかったね」

なまえはヘッドから視線を外すと、夕焼けに染まる海を眺める。

「わかるよ。君のいる場所は…風が教えてくれる」

「そうか…俺には君のいる場所はわからないな…どうしたら風は教えてくれるんだろう…?」

それとも、それも君の第1フェーズの力なのかな?

ヘッドは冗談めいた口調で言う。

「秘密だよ」

まともな答えを期待していなかったのか、答えに察しがついているのか、ヘッドは深く追求する事もなくそうか…とだけ言った。
海風が2人の間を吹き抜けて行く。

「こうして君といると本当に心が安らぐよ…嫌な事も全部忘れられる…」

ヘッドはベンチの背凭れに凭れて、そう呟くと目を閉じる。

「不思議なものだね…君と出会ってから、これまで俺が鮮やかな世界だと思っていた世界は、更に鮮やかになった…」

「…私もだよ。君といる時は、世界が色付いて見える…」

なまえは薄暗くなってきた空を見上げて目を細める。

「…灰色の世界は、星が綺麗に見えないね…」


「じゃあ、俺が君の世界に色を付けてあげるよ」


なまえはヘッドを振り返ると、何も言わず微笑む。

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