君の面影だけが彼を愛おしく思わせる

「―今日は俺に会いに来てくれたのかな?」


空が夕焼けに染まる頃、例の公園に来たスガタにヘッドは声をかける。

「どんな絵を描いてるか気になってね」

「それは申し訳ない。まだ何も描き始めてないんだ」

「美術部員?」

ヘッドはははっ、と小さく笑う。

「実は学校にはほとんど行って無い」

「君が興味を持ったのは、俺の描く絵じゃなく、絵を描く俺の方だな。この前会った時に思った」

「―君は、何処か俺に似ている」

ヘッドはスガタに目を向ける。

「君は自分の進路について迷っている。そしてそれはおそらく、常識から外れた様な選択肢だ」

「…なぜ、そんなふうに思うんです?」

スガタは苦笑を浮かべながら言う。
ヘッドは笑みを深める。


「―俺達は似てるからさ」


「実は、ある子に頼まれて、今、というか随分前から、1枚もう描いてるんだ」

「へぇ…そうなんだ」

「彼女も、君と同じで、絵を描く俺に興味を持ってる」

「じゃあ、その子も、貴方と似ているの?」

「彼女は気付いてないかもしれないけど、似ているよ」

「それで、その子にはどんな絵を?」


「―世界だ」

ヘッドは夕日に手を翳す。

「世界…?」

「彼女の世界には、色が無いんだ」

「色が、無い…?」

「だから、俺に世界に色を付けて欲しいと思ってる…けど、裏を返せば、それは彼女の世界を塗りあげてしまったら、彼女が俺の側にいる理由が消えてしまう…」

「あの子は自由が好きだから、絵が完成したら、渡り鳥の様に、あの子も遠い世界に旅立って行ってしまう気がするんだ…それが少し怖くて、その絵は全然進まなくてね」

ヘッドはスガタを見て、自嘲気味に微笑む。

「好きなんだね…その子の事」

「あぁ。好きだよ…大切に想ってる…」

ヘッドは僅かに目を細める。

「彼女も俺の事を好きだと言ってくれるけど、多分、俺が欲しいものじゃない…」

「伝えてみたら?その子に」

「そうだね…伝えたら、あの子は困った様に笑うんだろうなぁ」

独り言のように呟いた。

「悪いね…知りあって間もない君に急にこんな話をしてしまって…」

「いや、構わないよ」

「君が彼女と少し似てるからかな…つい喋りすぎてしまった…」

ヘッドは小さく笑うと、再び沈みゆく夕日を見つめる。


「―…生きる事は、喜ばしくもあるけど、苦しくもあるよね…」

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