叶わぬ桜色
「ん…?」
車の窓から外を眺めていたなまえは見慣れた人物の姿に声を上げる。
「どうかしましたか?」
「ベニオさんだ…」
ポツリと呟く。
「シンドウの屋敷の方から来ましたね。お手合わせでもして貰っていたのでしょう」
なまえはふーん…と目を細める。
「お手合わせねぇ…リン、先帰って良いよ」
「わかりました」
「…ベニオさん」
公園のベンチに腰掛けたベニオの隣りになまえも座る。
「?なまえちゃん…」
「スガタと手合わせでもしてたの?」
「…」
「そっか。して貰えなかったの…」
―その顔は。
「…うるさいわよ」
ベニオは苛立たしげな口調で言う。
「…迷っているのか?」
「え…?」
「―綺羅星!」
「、綺羅星!」
ベニオは僅かに眉を顰めてなまえを見る。
「まさか…グラウクローネか…?」
なまえは笑みを深める。
「驚いたわ…君がまさか綺羅星の一員だったなんて…」
ベニオは落胆とも呆れとも取れない小さな溜息をつく。
「…サイバディを復元させる自信が無いのか?スカーレットキス」
なまえは静かに問う。
「何…?」
「―サイバディの無いフィラメントは、財力や技術力を持つおとな銀行や科学ギルドと違い、今や実質的な非戦力だ。
それをあのマンティコールが放っておくと思うの?」
「それは…」
「なら、貴女のリビドーの強さを見せろ。そうすれば、サイバディは応える」
「…」
ベンチを立つなまえをベニオが呼び止める。
「何故、シンドウ家の一員の君が綺羅星にいる…」
「―いずれわかるよ。ベニオさん」
なまえは感情の読めない瞳で微笑むと、踵を返す。
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