in the faraway land
まだ、起こさないで…。もう少しだけ、このまま夢を見ていたい…―。とっても、幸せな夢なんだ。
あと、5分だけでいいから―。
声が、する…。聞こえる…。君の、声―。
起きなきゃってわかってるのに、身体が金縛りにあったみたいに、重くて、動かない。
「―ン…クラ…クラン、起きて」
重たい瞼をどうにか開くと、突き刺すみたいに光が差し込む。カーテン越しだというのに、昼間の日差しは、痛い。
「…」
「クラン!やっと起きた!」
眩しさの次に飛び込んできたのはナイの顔。
大きなガラス玉をはめ込んだみたいな青い瞳は空みたいで、見てるだけで吸い込まれそう。
「…ナイ…」
喉がカラカラに渇いて、掠れた声しか出ない。というか、どうして僕はこんな所で眠っていて、ナイに起こされてるんだろ…。
「大丈夫?」
喋る度に、ナイの黒い髪がふわふわと揺れる。
くるん、と毛先が跳ねた髪質が嫌だって彼女はいつも嘆いているけど、僕はそんなに嫌いじゃない。
そんな事言ったらいかに嫌かうんざりするほど聞かされるから言わないけれど。
「僕、倒れたの…?」
ぼんやりとした思考で、最後に見た記憶を辿る。
確か僕はナイや他の子達と外にいた筈…。
「うん」
「そう…」
「院長先生呼んでくるね!」
相変わらずふわふわと髪を揺らしながら部屋を出ていくナイの後ろ姿をぼんやりと追いかけてから、小さく息を吐く。
起こした上体をぽすり、と再び枕に沈ませる。
ふわふわの柔らかい感触が気持ちいい。
「…」
これで、8回目。
今月に入ってから倒れるのはこれで8回目だ。
貧血か、体調不良かと色々薬を貰ったり、食べ物や生活を変えてみたりしたけど、どれも結果にはならなかった。
最近では自室で眠るよりも、医務室で眠る時間の方が長い気がする。
ごろん、と入口に背を向けるように横向きになって、目を閉じる。
最近の僕は、僕の身体は、何かおかしい…。
日差しが目に痛いと感じるのは、昔からだった。それこそ、初めて外の世界に出た瞬間から…。
それでも我慢できない事はなかった。でも、今は前とは少し、何かが違う。
何かが、前とは変わり始めてる…。
ゆっくりと目を開ける。まだナイは戻ってきていない。
その事に、少しだけほっとしている自分に嫌気がさす。
ナイも皆も、僕を心配してくれてるのに…。
「…」
大丈夫…。きっと、大丈夫だ…。
こんなの、きっとすぐに治る。風邪、みたいなものだ…。
身体を起こして、サイドテーブルに置いてあった水の入ったコップを取ると、流し込む様に一気に飲み干す。
飲みおえて、コトリ、と置いたコップをつぅっと雫が流れ落ちる。
「…」
喉が、乾いた…―。
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