新たな仲間


先の事があった影響もあり私は少しだけ三日月に対して壁を作ってしまうようになってしまった。勿論、三日月も鶯丸も特に何も気にせず普段と変わらない様子だったのだが、私は三日月と目を合わすのが少し怖い。
他の刀剣達も様子がおかしい事に気が付いたのか何かと気にかけてくるようになった。特に普段相談事をしていた石切丸と燭台切には何かあったのか、大丈夫かとしつこく言われたが、三日月の事を話す気にはならず二振りともに適当に流してしまった。
そして私の部屋や執務室の物の移動も解決していない。未だに時々物が移動しているように感じる。この事は他の刀剣達にも聞いたが誰も無断で部屋に入っていないという。それは、一体どういう事なんだろうか。1.私の気のせい2.誰かが嘘をついている3.何か違うものの仕業……まで考えたが頭が痛くなってやめた。
もう考える事が嫌になり、何か一つの事に集中したくなって今、皆が出陣している中、鍛刀することにした。どうせいつも失敗してるし、ましてや今は近侍もつけていない。今回だって失敗するのは分かっているが、何かせずにはいられなかったはずなのだが…。

「うっそぉ……」

ただ淡々と二回適当に資材を入れて鍛刀を行った。
時間表示パネルには二十分と五時間の数字が並んでいて、私は自分の目を疑い、二度どころか何度もその表示を確認した。…間違いない、この時間は短刀と薙刀だ!!
誰もいない空間で私は両手を上にあげ、その場で小躍りした。今は誰もいないから恥ずかしくない。
さてさて、一頻り喜んだところで、私は懐から有り余っているお手伝い札を二枚取り出した。こういう時の為に沢山ストックを作っておいたのだよ。
同時に二つ札をかざすと短刀と薙刀二振りが出来上がる。まずは短刀の方に手を伸ばし霊力を込める。部屋中が光につつまれ、一振りの短刀が顕現した。

「ばくは、今剣!よしつねこうのまもりがたななんですよ!どうだ、すごいでしょう!」

ぴょこっと私の目の前に飛び出してきたのは短刀というだけあって私よりずっと背の低い男の子だった。

「私はこの本丸の審神者。これからよろしくね、今剣」
「あるじさまですね!よろしくおねがいします!」

手を差し出せば嬉しそうに私の手を取り、その場でくるりと回った。
今まで私より背も身体も大きい刀ばかりだったから自分より小さなその姿はとても新鮮だ。子供の様な姿をしているが、この刀も私よりずっとずっと年上なんだよなぁ…。
嬉しそうにしている今剣を連れ、もう一振り顕現させる為手をかざし霊力を注ぐ。こちらは五時間の薙刀、顕現されるのは一振りだけだ。身体の力が持っていかれるのがわかると同時に部屋全体が光に包まれ、そして一振り顕現された。

「おお。小さすぎて気づかなんだわ。俺は岩融、武蔵坊弁慶の薙刀よ!がはははは!」

でかい。とにかく薙刀も身体も声も大きい。この本丸にいるどの刀よりも大きいので見上げると首が痛い。
私が見辛そうにしていると、それに気が付いた岩融が私の目線に合わせてかがんでくれた。

「私はこの本丸の審神者。よろしくね、岩融」
「おお、よろしく頼む。……む?そこにいるのは今剣か?」
「岩融!おひさしぶりです!」

今まで黙っていた今剣が飛び出していき、岩融に勢いよく抱き着いた。彼はよろめきもせず、それを受け入れている。刀剣同士、繋がりのあるものがいるとは聞いていたが今剣と岩融がそうだったとは…たまたまとは言え、二振り同時に顕現する事が出来てよかった。嬉しそうにしている二振りを見て、こちらも口元が緩んだ。
とはいえ、いつまでもここにいる訳にはいかないので二振りに声をかけ本丸内を案内する事にした。二振り用の部屋も用意せねば。それにもう少ししたら他の刀達も帰ってくるし、今剣と岩融を紹介しないとね。



「こりゃ驚いた」

帰還した六振りを出迎えたところで本日の隊長の鶴丸が目を真ん丸に開いて呟いた。
それはそうだ、鍛刀した私だって驚いたのだから彼だって驚くだろう。他の刀達もそれぞれ驚いていた様だったが皆すぐに受け入れていた。光忠に至っては二振りの歓迎会をする為に今夜はごちそうを作るそうだ。
さてさて、後問題があるとすれば…

「…三日月」
「なんだ、主」

おかしい、いつもなら新しい刀剣が来る度に機嫌が悪くなっていた三日月から何もアクションがない。いや、機嫌が悪くなられても困るのだが…今の所その様子は見られない。
…三日月が変だ。

「新しく来た二振りって三日月と同じ三条なんだって。兄弟だね」
「そうだな」
「えーと…」

言葉を続けようとするが上手く言葉が出て来ない。
ここ最近仕事以外の会話をまともにしていなかったせいか話を続けることが出来なかった。それにやはり三日月と目を合わす気にはなれず、そのまま黙ってうつむいた。私と三日月の間になんとも言えない空気が漂う(私はそう感じた)。
そんな私に対して彼はただ一言だけ呟き、そのままその場を後にした。きっと汚れた戦装束を替えに自室に戻るのだろう。「良かったな」ただその一言だけを残していった。
良いじゃないか三日月機嫌が悪くならないのは私にとってもいいことのはずだ。面倒な事にもならないし、何よりこれ以上気まずくもならない。…なのに、なんなんだ、このもやもやとした気持ちは。
私はなんだか腑に落ちないまま、飛びついてきた今剣にはったおされるまで、そのままその場に立ち続けた。

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