始まり始まり


「そんな馬鹿な」

つい数刻前に審神者になったばかりの私の呟きが私自身の本丸の鍛刀部屋に響いた。
それはすぐそばに佇む管狐の耳にも届いていたはずなのだが、どうやらそちらもそれどころではないらしく、小さな口を目一杯あんぐりと開けていた。
私の手には一振りの太刀。それはとても美しい刀。今しがた出来たばかりの正真正銘私の初期刀だ。この刀を顕現させる前にどうして私が政府から配布されるはずの初期刀がおらず、端から鍛刀しなくてはならなくなったかを説明しよう。

数刻前の話だ。
見事に審神者になるための試験をパスした私は、担当の管狐こと、こんのすけに連れられて初期刀が置かれている部屋に向かった。向かったのはいいんだが、あろう事か一振りも残されていなかったのだ。
私もこんのすけも、その光景を見て愕然とした。慌ててその部屋にいた担当の人に聞くと、もう初期刀は在庫切れだと…そんな事があっていいのか政府よ。
どうしたもんかとこんのすけと頭を抱えていると、担当の人から驚きの発言があった。自身の本丸で初期刀を鍛刀してはどうか、と。こちらの手違いで初期刀が無かったので本来与えられる資源より多めにくれるらしい。
そんなありがたい話を聞いたので、是非に、とお願いして、そのままこんのすけに私の本丸に案内してもらい、そして最初に戻る。

資源の個数?こんのすけが最初だから〜とぐだぐだ言っていたが、私はそれを無視して適当にぶっこんだので覚えていない。とにもかくにも私はこの刀を作ってしまったのだ。
未だ言葉を発していないこんのすけを一見し、そして太刀に霊力を込める。
鍛刀の時間は4時間。そしてこの美しい刀。この刀は……

「三日月宗近。打ち除けが多い故、三日月と呼ばれる。よろしくたのむ」

かくして私とこの一振…三日月宗近との奇妙な共同生活は始まったのである。


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