ちゅうとりある


驚きの初期刀を鍛刀して早一か月。最初の数日はそれはもう大変だった。

しょっぱなからレア中のレア、鍛刀するのが難しいとされる天下五剣の一つ、三日月宗近をあっさり作ってしまうものだから、こんのすけは白目をむき尋常ではない速さで政府に報告するし、当の本人である三日月は状況を把握してるのかしていないのか分からないが、小さく首を傾げた後、あっはっはっと笑っていた。笑いごとではないのだよ。
そして私といえば、いきなり太刀のそれもレア刀を顕現させたせいか、身体から力が抜け…ぶっ倒れた。

次に目を覚ましたのは、なんとそこから二日後だった。
重い瞼を無理矢理持ち上げ、そして視界に入ってきたのは心配そうな顔をしたこんのすけと、穏やかな笑みを浮かべた三日月だった。起き上がり身なりを整えてから、こんのすけに軽い説教を受けたが、その後こんのすけから衝撃的な発言をされる。
「今回、主様が初鍛刀にも関わらず三日月宗近を作ったのは前代未聞。恐らくは主様の高い霊力が関係しているはずです!政府からはかなり期待しているとのことです!」普段さほど痛むことのない胃がチクりと痛んだ気がした。

その後は他の初心者審神者と同様にチュートリアルとやらをこなす為に三日月を出陣させることになった。
顕現させてから三日月と一言も会話をしていない事に気が付き、出陣しようとしていた三日月に「気を付けていってらっしゃい」と一言告げれば、数回瞬きをした後、嬉しそうに「相わかった」と言って出陣していった。
そこからは少し曖昧だが、帰ってきた三日月が重傷で傷だらけの血だらけで私が悲鳴を上げたのは覚えてる。手当をしている最中に「世話されるのは好きだ」とこれまた嬉しそうにしていた。重傷が何を言っている。
何をどうしたんだったか…気が付けば、こんのすけに連れられ、また鍛刀部屋にいた。
本来はチュートリアルで初めて鍛刀するので、もう、一度鍛刀をしている私には変な感じがしたが、一番最低値で鍛刀する事になった。
三日月が「俺だけでは不満か?」とこれまた笑顔で聞いてきたが、不満とかではなくてだな…と私が言いかけた所で、こんのすけが痺れを切らしたかのように、尻尾で床を叩いた。すみません。
最低値で鍛刀するって事は短刀が来るのかな?って思っていたんだが…何故か失敗した。一か月たった今でも何故失敗したのかわからない。その後二回程同じ数値で鍛刀したが二回とも失敗に終わった。
こんのすけと三日月に慰められながら作った刀装は初めてなのに何故だか金色だった。

仕方ないので三日月だけでチュートリアルをこなし、少しの間、一人と一振でどうにかする事にした。
こんのすけからは三日月を顕現した影響がまだあるのかもしれないと言われたし、まぁ三日月は強い刀なので少しの間なら大丈夫だろう、と。

だがしかし、この人数では内番が回せなかった。

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