バレーボール全日本代表メンバー練習場のロッカーにて。

「ハァ⋯⋯」
「ツムツム今日元気ない!」
「木兎くんは今日も元気やな⋯⋯」
「なんかあった?」
「ぼちぼちな」
「へー」
「興味ないんかい! もうええわ。翔陽くんどこや。翔陽くんに話聞こ」
「しょーよー! ツムツムが呼んでる!」
「はーい」
「翔陽くん、突然やけど好きな子おる?」
「はい! え、好きな子? いや、いないです!」
「これは⋯⋯友達の友達の話やねんけどな」
「ウス」
「好きな子がおってな、なんや気になるなぁて感じの子やねんけどな、その子に元彼がおってな、まあそれはええやん。元彼くらいおるわな。せやけど、その元彼が実は死んでます言われたら、どうする?」
「ど、どうする?」
「いや幽霊どうこうの話やないで。その子がな、そういう理由やから昔の彼氏忘れられへんでおるってなって、翔陽くんならどうするんかなって」
「めっちゃ難しいっすね⋯⋯」
「せやろ。難いねん。ぶっちゃけそんなんめんどくさいやつやん。死んだ人間にどうやったら勝てるっちゅーねん。さっさと諦めるんが良いってわかっとるんやけど⋯⋯わかっとるんやけど、それがまた難いねん」
「え? なに? 誰が誰に勝つって?」
「木兎くんには聞いてへん」
「えー! ツムツムのケチ!」
「やって木兎くんのは参考にならんもん。聞かんでもわかる」
「酷いな!」
「ほんま予想外過ぎてびっくりやわ。どないせいっちゅうねん。まさか過ぎるやろ。アカン⋯⋯俺には受け止めきれへんわ」
「俺?」
「ちゃう。俺やないで。友達の友達や」 

 木兎が名字へメッセージを送る数時間前の出来事である。

(20.05.29)