なな!
「早く放課後にならないかな」
「お前今日そればっかりだな」
「だって牛島先輩がバレーやってる姿見られるの久しぶりなんだもん」
普段の部活は見学禁止だけど、今日の練習試合は部外者の見学が可能だと情報を聞きつけたのは昨日の事。
そんなの行くしかないでしょと、正直授業は上の空で一日中時計ばかりみている。
でもこの休み時間が終われば本日最後の授業。そしてそれを乗り越えれば無事に放課後だ。
「白布くんも今日頑張ってね」
「人をおまけみたいに言うな。あと絶対牛島さんに迷惑かけるなよ」
「かけないよ! それは私だって嫌だよ!」
同じ年齢でも同じクラスでも同じ委員会でもない私が牛島先輩と接点を持てるのはこういう時だけ。接点と言って良いのかすら怪しいくらいだけど、牛島先輩の姿をまじまじと見れる唯一の機会である事には変わりない。
そんな特別な時間なんだから迷惑をかけるなんて絶対にするわけない。
「ギャーギャー騒いだら出禁にするからな」
「ひとりだし騒ぐ時は心の中で騒ぎます」
「ひとり?」
「うん。友達は部活があるから」
そう。今回はひとりで牛島先輩を応援しに行くのだ。少し前の私だったら絶対に考えられないことなのに、人間ってこんな短期間でも積極的になれるんだなって我ながら感心する。
ただ白鳥沢で行われる練習試合と言っても、ひとりでの観戦は初めてだからちょっと緊張するのは否めない。
「ふーん」
興味があるのかないのか、白布くんの反応は素っ気ない。
ああ、でもよく考えてみると白布くんがいるんだし、ある意味ではひとりじゃないかもしれない。そう考えると少し気が楽になる。
「白布くんの事も今回はいっぱい応援する!」
1番の目当てはやっぱり牛島先輩なんだけど、白布くんの事をもっと知りたいという気持ちもあるから同じくらい白布くんの事を目に焼き付けたい。
「……あっ!」
「なんだよ急にでかい声出されると驚くだろ」
「写真は!? 写真は許されてる!?」
いや、目に焼きつけるだけじゃダメだ。いつでも見返せるように写真にも残したい。携帯しかないけどこんな事ならこっそり家のカメラ持ってくるんだった。
「駄目だろ」
「ダ、ダメなの!?」
「仮に監督とコーチが許しても俺が許さねぇ」
「白布くんが許さない……」
「牛島さんの写真が名字に悪用されかねないからな」
「しないよ! たまに見返して、へへっかっこいいな……ってなるだけだよ」
「それが悪用なんだよ」
それすらも悪用になるなんて白布くんの基準は厳しすぎる。直接危害を加えるわけじゃないんだから、へへっかっこいい……って思うくらい許して欲しい。
それとも白布くんは私が牛島先輩のストーカーにでもなるんじゃないかって心配してるんだろうか。
いくらなんでもそこまではしないよ、白布くん。
「白布くん、私、確かに牛島先輩の事は好きだけど法を犯すような事はしないから」
「法、ってお前なに想像してんだよ」
「や、白布くんってば私が牛島先輩のストーカーになるんじゃないか心配なのかなぁって」
「さすがにそこまでは考えてなかったけど名字ならやりかねない気がしてきた……」
「だからそうはならないってば!」
心外なんですけど! と白布くんの言葉尻に声を被せると、白布くんは嘲るような笑みを見せた。
バカにしているのか、それとも私の反応を楽しんでいるのか、今日はちょっと意地悪な方の白布くんだなぁと思いながら、それでも会話が途切れることはない。
「あと試合中に俺の名前呼ぶんじゃねぇぞ」
「白布くん頑張って! 的な?」
「絶対やめろ」
「……フリ?」
「んなわけあるか」
「禁止されるとやりたくなる……」
「やったら一生無視する」
一生無視されたら永遠に牛島先輩の連絡先聞けないんだけど。それは死活問題なんだけど。
「今日の白布くん厳しめだね……」
「そもそも名字に優しく接してるつもりはないけどな」
「そんな根本を否定するような事言わなくても」
「名字の場合は言わなきゃ伝わらないだろ」
「白布くんの言葉が私の心に次々突き刺さる……」
項垂れるしかない。机の木目をじっと見つめて、私なにか白布くんに機嫌損ねるようなことしたかな? と考える。あ、損ねることしかしてないな。
「まあそこが名字の凄いところなんだろうけどな」
思わず白布くんを見つめた。緩くあげられた口角が、先程とは違う意味の笑みである事を教えてくれる。
面映ゆさが伴うそれに、なんと返答をして良いのかわからず、私はただにやけてしまいそうになるのを我慢するだけだった。
(24.04.29)
「お前今日そればっかりだな」
「だって牛島先輩がバレーやってる姿見られるの久しぶりなんだもん」
普段の部活は見学禁止だけど、今日の練習試合は部外者の見学が可能だと情報を聞きつけたのは昨日の事。
そんなの行くしかないでしょと、正直授業は上の空で一日中時計ばかりみている。
でもこの休み時間が終われば本日最後の授業。そしてそれを乗り越えれば無事に放課後だ。
「白布くんも今日頑張ってね」
「人をおまけみたいに言うな。あと絶対牛島さんに迷惑かけるなよ」
「かけないよ! それは私だって嫌だよ!」
同じ年齢でも同じクラスでも同じ委員会でもない私が牛島先輩と接点を持てるのはこういう時だけ。接点と言って良いのかすら怪しいくらいだけど、牛島先輩の姿をまじまじと見れる唯一の機会である事には変わりない。
そんな特別な時間なんだから迷惑をかけるなんて絶対にするわけない。
「ギャーギャー騒いだら出禁にするからな」
「ひとりだし騒ぐ時は心の中で騒ぎます」
「ひとり?」
「うん。友達は部活があるから」
そう。今回はひとりで牛島先輩を応援しに行くのだ。少し前の私だったら絶対に考えられないことなのに、人間ってこんな短期間でも積極的になれるんだなって我ながら感心する。
ただ白鳥沢で行われる練習試合と言っても、ひとりでの観戦は初めてだからちょっと緊張するのは否めない。
「ふーん」
興味があるのかないのか、白布くんの反応は素っ気ない。
ああ、でもよく考えてみると白布くんがいるんだし、ある意味ではひとりじゃないかもしれない。そう考えると少し気が楽になる。
「白布くんの事も今回はいっぱい応援する!」
1番の目当てはやっぱり牛島先輩なんだけど、白布くんの事をもっと知りたいという気持ちもあるから同じくらい白布くんの事を目に焼き付けたい。
「……あっ!」
「なんだよ急にでかい声出されると驚くだろ」
「写真は!? 写真は許されてる!?」
いや、目に焼きつけるだけじゃダメだ。いつでも見返せるように写真にも残したい。携帯しかないけどこんな事ならこっそり家のカメラ持ってくるんだった。
「駄目だろ」
「ダ、ダメなの!?」
「仮に監督とコーチが許しても俺が許さねぇ」
「白布くんが許さない……」
「牛島さんの写真が名字に悪用されかねないからな」
「しないよ! たまに見返して、へへっかっこいいな……ってなるだけだよ」
「それが悪用なんだよ」
それすらも悪用になるなんて白布くんの基準は厳しすぎる。直接危害を加えるわけじゃないんだから、へへっかっこいい……って思うくらい許して欲しい。
それとも白布くんは私が牛島先輩のストーカーにでもなるんじゃないかって心配してるんだろうか。
いくらなんでもそこまではしないよ、白布くん。
「白布くん、私、確かに牛島先輩の事は好きだけど法を犯すような事はしないから」
「法、ってお前なに想像してんだよ」
「や、白布くんってば私が牛島先輩のストーカーになるんじゃないか心配なのかなぁって」
「さすがにそこまでは考えてなかったけど名字ならやりかねない気がしてきた……」
「だからそうはならないってば!」
心外なんですけど! と白布くんの言葉尻に声を被せると、白布くんは嘲るような笑みを見せた。
バカにしているのか、それとも私の反応を楽しんでいるのか、今日はちょっと意地悪な方の白布くんだなぁと思いながら、それでも会話が途切れることはない。
「あと試合中に俺の名前呼ぶんじゃねぇぞ」
「白布くん頑張って! 的な?」
「絶対やめろ」
「……フリ?」
「んなわけあるか」
「禁止されるとやりたくなる……」
「やったら一生無視する」
一生無視されたら永遠に牛島先輩の連絡先聞けないんだけど。それは死活問題なんだけど。
「今日の白布くん厳しめだね……」
「そもそも名字に優しく接してるつもりはないけどな」
「そんな根本を否定するような事言わなくても」
「名字の場合は言わなきゃ伝わらないだろ」
「白布くんの言葉が私の心に次々突き刺さる……」
項垂れるしかない。机の木目をじっと見つめて、私なにか白布くんに機嫌損ねるようなことしたかな? と考える。あ、損ねることしかしてないな。
「まあそこが名字の凄いところなんだろうけどな」
思わず白布くんを見つめた。緩くあげられた口角が、先程とは違う意味の笑みである事を教えてくれる。
面映ゆさが伴うそれに、なんと返答をして良いのかわからず、私はただにやけてしまいそうになるのを我慢するだけだった。
(24.04.29)