きゅう!
「白布くん! 今日からテスト期間入るし部活ないよね? 一緒にスタバ行こ!」
「お前は勉強しろよ」
「スタバで一緒に勉強しよーってこと」
「嫌だ」
「嘘でもいいから少しでも悩む仕草を見せて!」
放課後、今日から全部活動が休止になる事だし、そろそろ一緒にスタバくらいは行ってくれるんじゃないかなと思って誘ってみたけれど結果は惨敗だった。
教科書をまとめ、帰り支度をしている白布を見つめながらせめてマックとか一緒に行ってくれないかなぁ、なんて諦めの悪いことを考える。
「ちなみにマックは……?」
「マックもいかねぇ」
「チッ……」
「舌打ちすんな」
「だって白布くんガード固いんだもん」
と言うか、いくらなんでも固すぎる。
他の女の子には当たり障りなく接してるし、もしかして白布くん私のこと実は嫌いだったりするのかな。いや、でもさすがに嫌いな人とお昼ご飯一緒に食べる事はしないだろうから嫌いまではいってないはず。
「白布くんの好感度が分かる装置ほしい」
「アホみたいな事言うな」
「でも白布くんってば私にだけ当たり強くない?」
「それは名字が牛島さんの連絡先教えろってしつこいからだろ」
それを言われたら何も言えない。でも、だからって諦める事も出来ないし。結局は白布くんに私のしつこさを認めてもらう他ないのだ。
「じゃあ途中まで一緒に帰ろ! バス停まで歩いた仲だし」
「じゃあってなんだよ。つーか調子にのんなよ」
「へへへ」
「笑って誤魔化すな」
そんな事を言う割に、私がしれっと白布くんの隣に並んで教室を出ても怒ったり嫌な顔をしたりはされない。このまま、またバス停まで一緒に歩けたら嬉しいんだけどな。
歩調を合わせてくれるのを良いことに、私は白布くんに話題をふりつづける。
「ね、白布くんって彼女に対してもそんな感じ……なわけないか、さすがに。でも白布くんに彼女ってちょっと想像出来ないよねぇ」
「勝手に想像するんじゃねぇよ」
「想像くらい勝手にさせてよ!」
「妄想料取るぞ」
「シビアだ……」
そんな風に廊下を歩いて、階段を降り、私たちは玄関にたどり着く。
そして外靴に手をかけたタイミングで、そう言えばロッカーにポーチを置いていたままだったと気付いた。
せっかく白布くんと玄関まで並んで歩けたし一瞬このまま家に帰ろうかと考えたけれど、中にはメイク用品も入ってるから学校に置きっぱなしにするのは避けたいところ。
「ごめん、白布くん。教室にポーチ忘れちゃって取りに戻るから先に帰ってて!」
言って、上履きを履き直して、白布くんを振り返る。
「あ、でも待ってくれたりする?」
期待を半分だけ込めて聞いてみた。
「どうだろうな」
淡々とした声色。あ、これは待ってくれない気がする。そもそも玄関まで一緒に来れた事だって私が半ば強引に白布くんの隣を歩いたからだし、待ってもらうなんてやっぱり図々しいお願いなのかもしれない。
白布くんが外靴に履き替えたのを視界の隅で捉えながら、私は小走りで教室へ戻る。人が減った廊下。誰もいない教室。西日が差し込む部屋はじんわりと温かく、これからやってくる夏の暑さを彷彿とさせた。
急いでロッカーに置き忘れていたポーチをバッグにしまって、また駆け足で玄関へ向かう。
白布くんはいないってわかっているのに、僅かに残る期待が私を急かしていた。まだ白布くんが玄関にいますように。私の事待っていてくれますように。そんなことを思ってしまうくらいに。
ふたつ飛ばしで駆ける階段。先生に出会いませんようにと願う踊り場。
「白布くん」
そして、戻ってきた玄関。
「遅せぇよ」
白布くんはさっきのように淡々と、どこか気怠げに言う。
「これでも走ったんだよ。先生に見つかったら絶対怒られてた」
「名字の場合は怒られた方がよかったかもな」
「なんで!」
白布くんが待っていてくれて嬉しい。でも嬉しいって言葉だけじゃ足りない何かがある。それが何かのか分からない私は、結局、嬉しさだけを自覚して喜ぶのだ。
今度こそ、と靴を履き替えて玄関のドアをくぐる。バス停まではせいぜい200メートルほど。一緒に帰ると言うにも、散歩と言うにも憚られるくらい。でも私にとってはとても意味のある200メートル。
「白布くん、待っててくれてありがと」
「別に待ってたわけじゃねぇ」
並ぶ肩。歩幅はやはり同じくらい。
じゃあどうしてまだ玄関にいたの、と聞きたかったけれど、聞いても白布くんは答えを教えてくれないような気がして聞けないままだった。
(24.05.02)
「お前は勉強しろよ」
「スタバで一緒に勉強しよーってこと」
「嫌だ」
「嘘でもいいから少しでも悩む仕草を見せて!」
放課後、今日から全部活動が休止になる事だし、そろそろ一緒にスタバくらいは行ってくれるんじゃないかなと思って誘ってみたけれど結果は惨敗だった。
教科書をまとめ、帰り支度をしている白布を見つめながらせめてマックとか一緒に行ってくれないかなぁ、なんて諦めの悪いことを考える。
「ちなみにマックは……?」
「マックもいかねぇ」
「チッ……」
「舌打ちすんな」
「だって白布くんガード固いんだもん」
と言うか、いくらなんでも固すぎる。
他の女の子には当たり障りなく接してるし、もしかして白布くん私のこと実は嫌いだったりするのかな。いや、でもさすがに嫌いな人とお昼ご飯一緒に食べる事はしないだろうから嫌いまではいってないはず。
「白布くんの好感度が分かる装置ほしい」
「アホみたいな事言うな」
「でも白布くんってば私にだけ当たり強くない?」
「それは名字が牛島さんの連絡先教えろってしつこいからだろ」
それを言われたら何も言えない。でも、だからって諦める事も出来ないし。結局は白布くんに私のしつこさを認めてもらう他ないのだ。
「じゃあ途中まで一緒に帰ろ! バス停まで歩いた仲だし」
「じゃあってなんだよ。つーか調子にのんなよ」
「へへへ」
「笑って誤魔化すな」
そんな事を言う割に、私がしれっと白布くんの隣に並んで教室を出ても怒ったり嫌な顔をしたりはされない。このまま、またバス停まで一緒に歩けたら嬉しいんだけどな。
歩調を合わせてくれるのを良いことに、私は白布くんに話題をふりつづける。
「ね、白布くんって彼女に対してもそんな感じ……なわけないか、さすがに。でも白布くんに彼女ってちょっと想像出来ないよねぇ」
「勝手に想像するんじゃねぇよ」
「想像くらい勝手にさせてよ!」
「妄想料取るぞ」
「シビアだ……」
そんな風に廊下を歩いて、階段を降り、私たちは玄関にたどり着く。
そして外靴に手をかけたタイミングで、そう言えばロッカーにポーチを置いていたままだったと気付いた。
せっかく白布くんと玄関まで並んで歩けたし一瞬このまま家に帰ろうかと考えたけれど、中にはメイク用品も入ってるから学校に置きっぱなしにするのは避けたいところ。
「ごめん、白布くん。教室にポーチ忘れちゃって取りに戻るから先に帰ってて!」
言って、上履きを履き直して、白布くんを振り返る。
「あ、でも待ってくれたりする?」
期待を半分だけ込めて聞いてみた。
「どうだろうな」
淡々とした声色。あ、これは待ってくれない気がする。そもそも玄関まで一緒に来れた事だって私が半ば強引に白布くんの隣を歩いたからだし、待ってもらうなんてやっぱり図々しいお願いなのかもしれない。
白布くんが外靴に履き替えたのを視界の隅で捉えながら、私は小走りで教室へ戻る。人が減った廊下。誰もいない教室。西日が差し込む部屋はじんわりと温かく、これからやってくる夏の暑さを彷彿とさせた。
急いでロッカーに置き忘れていたポーチをバッグにしまって、また駆け足で玄関へ向かう。
白布くんはいないってわかっているのに、僅かに残る期待が私を急かしていた。まだ白布くんが玄関にいますように。私の事待っていてくれますように。そんなことを思ってしまうくらいに。
ふたつ飛ばしで駆ける階段。先生に出会いませんようにと願う踊り場。
「白布くん」
そして、戻ってきた玄関。
「遅せぇよ」
白布くんはさっきのように淡々と、どこか気怠げに言う。
「これでも走ったんだよ。先生に見つかったら絶対怒られてた」
「名字の場合は怒られた方がよかったかもな」
「なんで!」
白布くんが待っていてくれて嬉しい。でも嬉しいって言葉だけじゃ足りない何かがある。それが何かのか分からない私は、結局、嬉しさだけを自覚して喜ぶのだ。
今度こそ、と靴を履き替えて玄関のドアをくぐる。バス停まではせいぜい200メートルほど。一緒に帰ると言うにも、散歩と言うにも憚られるくらい。でも私にとってはとても意味のある200メートル。
「白布くん、待っててくれてありがと」
「別に待ってたわけじゃねぇ」
並ぶ肩。歩幅はやはり同じくらい。
じゃあどうしてまだ玄関にいたの、と聞きたかったけれど、聞いても白布くんは答えを教えてくれないような気がして聞けないままだった。
(24.05.02)