03
 
「あ!エリザお姉さん、街が見えてきたよ」


「街…」


「まずは飲み物だね!もう少しの辛抱だよ、エリザお姉さん」


エリザより頭ひとつ分ほど小さいアラジンは繋いだ手の先にいるエリザを見上げて微笑んだ。


しかし当然と言えば当然なのだが、母親以外からの優しさに触れたことがない(それも偽りであったが)エリザにとってアラジンの太陽のような笑顔は少々眩しすぎた。


こんなことは初めてで、本当は嬉しくてしょうがないのにそれに対して体がついて行かない。
エリザはアラジンの言葉に対してただコクンと小さく頷くので精一杯だった。






ーオアシス都市ウータンー


「よかったねエリザお姉さん!美味しそうな食べ物がいっぱいあるよ!」


縦に黒い縞模様のある緑色の丸い物体、西瓜をアラジンが手渡してくる。大方隊商の商品であろう品であるがそんなことは聖宮から出てきたばかりのアラジンは知らないことであるし、一方のエリザも王宮育ちであったためそれが商品であるということを知らない。



ずっしりと重たいそれを手に持たされたエリザはジッと西瓜を見つめたのち、アラジンに目を移した。


早速むしゃむしゃと西瓜を食べ始めているアラジンの見様見真似で同じように食べてみようとするも、皮が硬くてアラジンのように上手に食べることができない。


「はい、エリザお姉さん」


「…?」


「エリザお姉さんが食べやすいように半分に割ってみたんだ これで食べれるかな?」


二つに分かれた西瓜を差し出してきたアラジンにエリザの瞳にうるうると涙の膜が張った。
こんな自分に勿体無いほどの優しさをくれるアラジン。エリザがずっと求めていたもの、渇望していたもの。それは人からの優しさだった。


再びぽろぽろと涙を溢すエリザにアラジンは優しく笑みながらその涙を拭ってやるのだった。





そうしてエリザが泣き止み、アラジンと一緒に西瓜を食べ始めて数十分が経過した。
隊商の荷台の中にいたエリザとアラジンが無心で西瓜を食べていると、荷台を覆っていた白いカーテンがバッと開いたのだ。


「キャーーッ!!」


「な…なんだてめーーらっ!?」


後方に目をやれば何やら二人の女性が驚いた様子でこちらを見ていた。一人は金髪にポニーテール、もう一人は黒髪に褐色の肌を持つ女の人だ。


「やあ僕はアラジン 旅人さ。こっちの綺麗なお姉さんはエリザお姉さん。今はこの赤くてあま〜い果物で食事をしているところさ!」


やあ、と言って片腕を上げながら至福そうな顔で自己紹介を始めたアラジンに、エリザもぺこりと軽く頭を下げる。


すると二人の女性のうちの一人、金髪にポニーテールの女の人が般若の様な顔つきで怒鳴り声を上げた。


「「さ!」じゃねぇだろこのコソドロがっ!!そこのお前も姉貴なら弟のしつけぐらいちゃんとしやがれっ!!」


「……っ!」


突然自分に向けられた怒鳴り声にエリザの華奢な体がビクッと揺れる。エリザは持っていた西瓜を手放してアラジンの服の裾をギュッと握った。


「そんな怖い顔でエリザお姉さんを怒らないでおくれよ!それにどうして僕たちが怒られないといけないんだい?」


アラジンは不安げな表情で裾を掴んできたエリザの手を握りながらそう問い返した。


「怒るも怒らないもあるか!その果物は私達の大切な商品なんだぞ!」


「……!?大切な…?それはすまないことをしたね…ど…どうしよう…」


「三日間タダ働きだーーっ!!」


こうして三日間隊商でのタダ働きが決まったエリザとアラジンの二人。
不安そうな瞳をしていたエリザだったが、そんなエリザをアラジンが見かねて手を差し出せばすっかり懐いた猫のように少女は少年の後について行くのだった。

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