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君といる時くらいは


僕は、工藤邸で沖矢昴と対峙していた。

「こんばんは…初めまして…安室透です…」

「はぁ…」

僕は気の抜けた返事をした、この一見全く正反対の性格の優男が赤井秀一の変装であると予想していた。赤井が死んだ時期と沖矢昴が現れた時期が重なっていることが、この男を疑い始めた証拠でもある。

「でも…初めましてじゃ…ありませんよね?」

僕は理路整然と沖矢昴を追い詰めていく。彼は大人しく話を聞いていたが、鋭い洞察力については隠そうとしなかった。

「連絡待ちです」

コト、と音を立ててスマホをテーブルに置く。

「現在、私の連れがあなたのお仲間を拘束すべく追跡中…流石のあなたもお仲間の生死がかかれば…素直になってくれると思いまして…でもできれば連絡が来る前にそのマスクを取ってくれませんかねぇ…沖矢昴さん…いや…」

チェックメイトだ。
この時僕は自分の勝利を確信して疑わなかった。

「FBI捜査官…赤井秀一!!」

沖矢昴はすっとぼけて口元のマスクを外すが、僕が言っているのはそのマスクではない。

彼の話す内容も、僕にはただの苦しい言い訳にしか聞こえなかった。

「そう…大きさは丁度…そのハイネックで…隠れるくらいなんだよ!!」

チョーカー型変声機を暴けばこちらのものだと僕は沖矢昴のハイネックを掴んだ…のだが、目的のものは見つからなかった。

何故だ!?

僕が動揺していると、テーブルの上のスマホが激しく鳴り出した。

「電話…鳴ってますけど…」

「あ、あぁ…」

電話を取ると、それはFBIの仲間を捕まえるために来葉峠へ向かわせた公安の仲間からだった。

「どうした?遅かったな…え?あ…赤井が!?」

それは赤井が現れたという報告で、僕の確信に満ちていたはずの仮説が一気に覆る。
では、この沖矢昴という男は一体何者なのだ。

「それで追跡は!?」

『先頭の車はタイヤに被弾してクラッシュ…後続車もそれに巻き込まれて走行不能車の続出で…』

部下たちは困り果てたような声で報告してくる。

「動ける車があるのなら奴を追え!!今 逃したら今度はどこに雲隠れするか…」

「オホン…すみません…少々静かにしてもらえますか?今、この家の家主が大変な賞を受賞して…スピーチをするところなんですから…」

沖矢昴は悠長にテレビで中継されているマカデミー賞を眺めていた。

「会った事はありませんけどね…」

僕は、全くペースを乱されていなかったどころか無関係であったかもしれない大学院生、沖矢昴を呆然と見つめていた。