夏の影と陽

 87.

*****

王は、ぼろぼろと涙を流していた。
すまなかった、すまなかった、と。
何度も、何度も。
俺に、祈るように。
……馬鹿だよなあ。
お前が謝る理由なんか、何一つ無いっていうのに。

俺と、俺の住んでいた森の王は、そう、腹心の友だった。
俺がそう言ったんじゃない。
王がそう言ってくれたんだ。

俺たちは、小さい時からいつも一緒に遊んでいた。
花の蜜を吸ったり、木と木の間を跳ね回ったり、川の中にもぐったり。
本当に、いろんなことをして遊んだ。
特に、たまにやってくる人間をからかって遊ぶのは、最高に面白かった。
道に迷わせたり、帽子を隠したり、手持ちのポケモンを眠らせたり。
二人でいろいろと考えて、たくさん悪戯をした。
もちろん悪いことだって分かってたし、みんなから叱られる事はあったけど、楽しくて、楽しくて、中々やめられなかった。
時には、こっそり人間のいる町に出て遊んだりもした。
人間が食べてる食べ物は、中々に美味しかった。
……王の側近に見つかってからは、しばらく森から出してもらえなくなっちまったけどな。

俺たちが大きな罪を犯してしまったのは、王が、本当の王になってからすぐの頃だった。
久しぶりに会った王は、前みたいな、意地の悪そうな笑顔で、俺にこう言った。

「お前に、頼みたいことがある」

俺は嬉しくて、口元がにやついて仕方が無かった。
また、前みたいに遊べるんだ。
また、王と一緒に。

「はい、なんでしょう」

俺はそう思えて、仕方がなかった。


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