街の中で
M.「手紙なんて私、読めないわよ」
「はっ…。さ、左様でございましたか。失礼いたしました…」
「な、何よ! 手紙なんて読んだこと無いわよ! 本当に失礼…ね…?」
「…あ、アニィ様?」
「……」
「あの、どうされまし」
「間違いないわ」
「は?」
「この匂い……間違いないわ。ああ、間違いなく、ゼルネアス様の香り……」
「え……」
「あんた、分かんないの? この高貴で雄大な、気品に満ちた香りが……」
「……」
「ま、あんたはあの森にずっといるから分かんないんでしょうね。もう何年も、ゼルネアス様はあの森を守っていらっしゃるから……」
「え、ええまあ。確かに……」
「それなのに、どうしてあんたからはその香りが少しも染み付いていないのかしら……。あんた、そこらへんの野糞でもかぶってきたんじゃない?」
「ちょ……! 先程からあんまりでございます、アニィ様! 何なんですか、一体!」
「ふん。まあいいわ。お話、聴いてあげる」
「え、ええ!?」
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