夏の陽の下

 11.

「ところで、この地図は本当に正確なの?」

私は彼にポケモンセンターで貰ったこの地方の地図を差し出して見せる。
この地図はタウンマップと呼ばれており、紙ではなく折り畳み式の機械である。
手の平程のサイズで、まるで携帯電話の様だった。
説明を聞くと、自分の居場所や、街・道路の情報も分かるという。
そんなハイテクノロジーな代物だが、トレーナーカードを見せると無料で貰えた。
ポケモンセンターの宿舎といい、何とも景気のいい世界である。
しかしこのタウンマップ、私にはどうしても腑に落ちない点がある。

「迷いの森、何もないのに迷うと言われていた。ですって」

迷いの森。
恐らく、この世界に来て最初に私が目を覚ました所だろう。
場所からして、間違い無いと思う。
この森は地図で見る限り…私が想像していた以上に、狭い森だった。
あんなに延々と歩いているかの様に感じたのに。
……しかし、名前は迷いの森という。
どういう事なのだろう。

「ああ、ここな」

「凄く迷ったのよ? 私」

「よくそうやって言われてんだよなー、この森。ミツキ、ドンマイ」

「とても深い森だったわ」

「いやでも、ほんとに何もねーぞここ」

「私、この地図を作った会社に問い合わせようかしら」

「やめとけって。また変人あつかいされっぞ」

「だって、またこの森で迷う人が出てきてしまうかもしれないじゃない」

「そりゃあ、ミツキの運が悪かったんだな」

「……」

「それに、ミツキみたいに別の世界から来てこの森で眠ってたやつなんて、他にいねえと思うぜ?」

「……」

「ま、あんま気にすんなって!」

何だか、狐につままれた様な気分だ。
あんなに歩いたのだから、そんなに小規模な森である筈は無いのだが。
しかし、確かめようにも私達が向っているのは全くの逆方向。
まあ、私としてはあんな森、近づきたくもないのだが。
もう一度行こう、なんて気はさらさら無い。
思っていた以上に、私にとってあの森での出来事はトラウマの様だ。

顔をしかめていると、しわがふえるぞーなどとからかって来る彼。
少し前を歩き、はははと笑っている。
全く、人が悩んでいる時に。空気の読めない人だ。
何だかむしゃくしゃして、背中に右ストレートをお見舞いしてやった。

「いてっ! なんだよ、びっくりしたー」

「あなたが失礼な事を言うからでしょ」

「あはは、ごめんって」

ちっとも悪びれる様子の無い彼に、私は溜め息をついた。
溜め息の先には、ホドモエの跳ね橋。
別名、リザードンブリッジが見えていた。


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