夏の陽の下

 12.

「ちわーす、ねぇ君、トレーナー?」

急に声を掛けられて驚いた。
振り向くと、マウンテンバイクに乗った青年がすぐ近くにいた。
ヘルメットにサポーター、ぱつぱつのサイクルウェアと、中々に本格的な身なりだ。
よく日に焼けており、サングラスを外すとくっきりとした痕が出来ていた。

「え、いや、まあそうなんですけど……」

咄嗟に出た私の曖昧な返事。
案の定、相手は首を傾げている。

「んー? なんかあるの? 勝負したいんだけど、いいかな?」

そこの彼、ポケモンでしょ?
そう言って、隣へと目を移す。
やはり、派手な髪色でポケモンだと分かるのだろうか。
それにしても、勝負? 勝負ってもしかして…

「ああ! いいっすよー! な、ミツキ!」

「駄目に決まってるでしょ、何言ってるの!」

元気良く応えた彼に、小声で停止させる。
何を考えているのだこの人は。

「いいじゃねーかポケモン勝負! ポケモントレーナーだろー?」

いや、それはそうかもしれないが、ちょっと待って欲しい。
物事には、順序というものがあると思う。

「私、ポケモン勝負なんてやった事ないし、見た事もないのよ?」

どうしろと言うの?
そう訊くと、彼は再び元気良く応えた。

「大丈夫! 俺、わりとつえーから!」


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