夏の夜の下

 104.

それでもミツキは、近づいてくる。
一歩ずつ、一歩ずつ。
くるな。
くるなよ。
おねがいだから。
おねがいだから。

「私は貴方に助けてもらったって、言ったでしょう? 私も、貴方を助けたいのよ、陽。……例え、世界が貴方のことを罪人として裁こうとしても、私は貴方の味方になりたいの。だから」

「それが……! それがダメなんだって、言ってんだろ!? なんで、なんで分かってくれねぇんだよ!!」

絶叫だった。
こんなに大きい声、久しぶりに出した。
喉が、びりびりする。

俺はもう、ミツキの顔は見えない。
見ることができない。
目を、合わせることができない。

「もう、もういいだろう!? 分かってくれよ! いい加減に、してくれ! お前は気持ち悪いって、怖いんだって、……いらないって、どっかに行ってしまえって、目の前からいなくなってしまえって、お前なんか、捨ててやるって、言ってくれよ!!」

「……陽」

「どうして……! どうして、分かってくれねえんだよ!!」

ひとり吠える今の俺は、野生のゾロアークと、何も変わらない。
頭に血が昇って、ぐらぐらする。
脳みそが熱くて、血管がはち切れそうだ。

なあミツキ。
今の俺じゃあ、お前に何をするか、分かんねえぞ。
だって今、俺はこんなにも、お前が憎い。
いつまでも俺に優しくしようとするお前が、憎くて仕方ない。
いつまでも綺麗なお前が、憎くて仕方がない。
いっそのこと、壊してしまえたら。
この手で、こわしてしまえたら。

……?

え?


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