夏の夜の下

 108.

「あの連なっている三つの星と、上下の大きな星を合わせて、白鳥座。それで……」

ミツキは、星の名前と、その星を合わせた星座というものをよく知っていた。
凄いな、と俺が言うと、がっこう、という所で教えてもらったらしい。


「なあミツキ。はくちょう、ってなんだ?」

「え? 白鳥?」

「うん。はくちょう」

「うーん……。スワンナ……みたいな鳥かしら。もっと小さいけれど」

「小さい? ……ふうん」

いいな。俺も、ミツキと一緒にがっこうってとこに行ってみたい。

「それでね、上の大きな星が、デネブ。下にある星と、真ん中辺りから右側にある星を合わせて、夏の大三角」

「へぇー……」

一応頷いて見せるけど、正直、星なんていっぱいありすぎて、ミツキがどれを指してんのか分かんねぇ。
でも、ミツキが俺にいっぱい教えてくれるのが嬉しいから、黙って耳を傾ける。

「ずうっと下にあるあの赤い星が、アンタレス。そこから斜め下に連なっている星と合わせて、さそり座よ」

「さそり?」

「さそりは……そうね、私も実物は見たことがないわ。猛毒を持っている生き物よ」

「なるほど、毒タイプか」

「え? ふふ、そうね」

あ、しまった。
ミツキのいた世界に、ポケモンはいないんだった。
なんだか、混乱しちまう。
だって考えられねえんだもん。そんなの。

ミツキが知っていて、俺の知らない世界。
ミツキが生まれて、生きてきた世界。

「ミツキの世界に、俺も行ってみたい」

「え?」

「そんで、ずっと一緒にいたい。ミツキと」

ミツキと一緒に、生きていたい。

「がっこうにも、行ってみたい。色んなことを教えてくれるんだろ?」

「うん……、そうね」

叶わないと分かっているどうしようもない俺の夢に、ミツキは頷いてくれた。
困った様に、笑ってくれた。

「流れ星に、お願いしないとね」

*****


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