夏の夢の家
112.*****
こんなことが、あってたまるか。
朝、ポケモンセンターの部屋に戻ったら、ミツキがいなくなっていた。
荷物も、服も、靴も、全てをそのままに、本当にミツキだけがいなくなってしまっていた。
あろうことか、アーティに貰ったライブキャスターまでもが、机の上に置かれたままになっている。
どうしよう。
頭の中が、真っ白だ。
昨日のミツキの様子からして、家出とかじゃあない…………と、思う。
……その、あんまり自信ないけど。
だとしたら、誘拐か……?
もしそうだったら、今頃ミツキはきっと、危ない目に遭っている。
早く、見つけ出さないと。
でも一体、何を手掛かりに探せばいいっていうんだ……?
普段あまり使うことの無い頭を使って、色々な考えが頭に浮かぶ。
焦れば焦るほど、時間だけが過ぎていって、それが更に俺を焦らせる。
くそ、こんなことになるなら昨夜、部屋から出るんじゃなかった。
変なプライドとか、もやついた気持ちとか、そんなの放っておいて、ミツキの傍にいるべきだった。
用心棒をしてやるって、守らなきゃって、俺、言ったのに。
口先だけで、偉そうなことばっかり。
「くそ……っ!」
……だめだ、ちっとも冷静になれない。
腹が立って、机に拳を打ち付ける。
上に置かれたままのライブキャスターが、ぐらりと揺れた。
「あ……」
そうだ。
そうだった。
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