夏の夢の家

 114.

最初は、アーティに連絡すべきだろうかと思った。
何だかんだ言って、アーティは信頼できる奴だし、つい先日、貞女へは近況を報告したばかりだ。
しかし、今あいつにこの状況を伝えたとしても、物理的に助けてもらうのは無理だろう。
ヒウンからここへは相当離れているし、こんなことを伝えて無駄に心配を掛けるのは、何だか嫌だ。
それならばと俺が連絡をしたのは、ミツキが会いたがっていたフキヨセシティのジムリーダー、フウロだ。

「待ってて。今、兵太を呼ぶから」

そう言って、すぐに画面から消えた彼女。
ありがとう、ありがとう。フウロ。
なんか今まで失礼なこと言っちゃって、ごめんな。

「おう。どうした、坊主」

急に画面から、ずい、と現れた大男。
全く、こんなにたくましいジイさんを、俺は他に見たことが無い。

「悪い、助けてほしいんだ……。ミツキが、いなくなった」

「お嬢ちゃんが? ……ふむ」

何もない方を向いて、顎を擦る兵太。
しばらく黙った後、兵太は俺に向かって口を開いた。

「まあ落ち着けよ、陽」

「……は?」

予想外の言葉に、たじろく。
いや、確かに俺は今、落ち着いてはいないだろうけど……。

「いいか陽。今から俺はそっちに行く。でも、それまでお前は一人だ。一人で考えて、行動しなくちゃいけない。慌てていちゃあ、普段の力は発揮できないぜ」

「……。分かった」

何ていうか、すげえ。
俺の頭の中のもやもやが、少しずつ晴れて、消えていく。
どうしてだろう。

「よし、じゃあ話してもらおうかな。何があったのか……、ゆっくりでいい。話してみろ」


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