夏の夢の家
116.*****
「おねえちゃん、次はこれ! これ読んで!」
「うん、いいよ」
ランプの光に照らされた机の上に、子供向けの絵本が積み重なる。
スリーパーのおともだち、ムシャーナかあさんのこもりうた、おいしいゆめのものがたり……。
もう何冊目になるか分からないが、隣に座る少年は飽きもせず、今か今かと瞳を輝かせている。
「クレセリアとみかづきのはね」
新しく持ってきてくれた、絵本のタイトル。
優しい色鉛筆のタッチで、大きな月と描かれているこのポケモンが、三日月ポケモンのクレセリアなのだろう。
「やんちゃなプーカはひみつがいっぱい。よなかにこっそり、どこゆくの?」
ここに置いてある本は、とにかく夢や睡眠に関する本ばかりである。
クレセリアというポケモンのことも、ここへ来てからもう何度も目にしている。
「ないしょのともだち、ないしょのともだち。ぼくだけがしっている、ないしょのともだち、クレセリア」
三日月ポケモンの、クレセリア。別名、三日月の化身。
このポケモンの羽根には不思議な力が宿っており、何でもこの羽根を持って眠ると、良い夢を見ることが出来るのだとか。
「きいてよきいて、クレセリア。きょうのおやつは、オレンのみ。たくさんたくさん、とってきた。きょうはどこゆく? クレセリア」
それと同時に悪夢避けの効果も発揮するらしく、それに関する書籍はこの場にも数多く見受けられた。
「どこゆくどこゆく、クレセリア。モココのすあな? ミルクのいずみ? いつかのように、ビーズのほしをくぐりぬけ、つきへゆくのもいいかもしれない」
その悪夢に関連付られるポケモンも、この世界には居る。
このクレセリアは、そのポケモンと対となる存在として伝えられているらしい。
「そういえば、きいてよきいて、クレセリア。あたらしいぼくの、おともだち」
そのポケモンの名前は、
「ダークライ」
暗黒ポケモン、ダークライ。
「いつかいっしょに、あそぼうよ」
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