夏の夢の家

 116.

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「おねえちゃん、次はこれ! これ読んで!」

「うん、いいよ」

ランプの光に照らされた机の上に、子供向けの絵本が積み重なる。
スリーパーのおともだち、ムシャーナかあさんのこもりうた、おいしいゆめのものがたり……。
もう何冊目になるか分からないが、隣に座る少年は飽きもせず、今か今かと瞳を輝かせている。

「クレセリアとみかづきのはね」

新しく持ってきてくれた、絵本のタイトル。
優しい色鉛筆のタッチで、大きな月と描かれているこのポケモンが、三日月ポケモンのクレセリアなのだろう。

「やんちゃなプーカはひみつがいっぱい。よなかにこっそり、どこゆくの?」

ここに置いてある本は、とにかく夢や睡眠に関する本ばかりである。
クレセリアというポケモンのことも、ここへ来てからもう何度も目にしている。

「ないしょのともだち、ないしょのともだち。ぼくだけがしっている、ないしょのともだち、クレセリア」

三日月ポケモンの、クレセリア。別名、三日月の化身。
このポケモンの羽根には不思議な力が宿っており、何でもこの羽根を持って眠ると、良い夢を見ることが出来るのだとか。

「きいてよきいて、クレセリア。きょうのおやつは、オレンのみ。たくさんたくさん、とってきた。きょうはどこゆく? クレセリア」

それと同時に悪夢避けの効果も発揮するらしく、それに関する書籍はこの場にも数多く見受けられた。

「どこゆくどこゆく、クレセリア。モココのすあな? ミルクのいずみ? いつかのように、ビーズのほしをくぐりぬけ、つきへゆくのもいいかもしれない」

その悪夢に関連付られるポケモンも、この世界には居る。
このクレセリアは、そのポケモンと対となる存在として伝えられているらしい。

「そういえば、きいてよきいて、クレセリア。あたらしいぼくの、おともだち」

そのポケモンの名前は、

「ダークライ」

暗黒ポケモン、ダークライ。

「いつかいっしょに、あそぼうよ」


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